パナソニック、役員の人数を増やしたワケ ピアニストとして活躍する女性役員も誕生

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一方、AVC社では、前任の宮部義幸社長が本社の技術や知的財産担当の専務となり、榎戸康二上席副社長が社長に就任する。榎戸氏はパナソニックが注力する車載と家電以外の法人事業全般を指すBtoBソリューションの主要部門である、システムソリューション事業を担当。榎戸氏の社長就任は、AVC社がかつて主流だったAV機器からBtoBソリューションのカンパニーにシフトする象徴的な人事と言える。

BtoBシフトに向けた融合の動きは、前述のAP社以外でも見られる。たとえば車載部門を担うオートモーティブ&インダストリアルシステムズ社(AIS社)。車載はパナソニックの成長分野の一つだが、電動自動車(EV)へのシフトや自動運転化などの流れに合わせ、その事業内容も変わってきている。

女性役員も誕生

象徴的なのが運転席周り(コックピット)領域。従来のカーナビやオーディオなどの機能を全て備える「次世代コックピット」という新領域が立ち上がっており、通信やデジタル技術などAVC社の技術との融合が進んでいる。

現在、コックピット領域を担うインフォテインメント事業部長を務める上原宏敏氏は、元々AVC社でテレビ事業部長を務めていた人物。今回、AIS社副社長と本社役員に就任し、AVC社との技術融合を担うことになる。

オーディオ事業を率いる小川理子氏は、ジャズピアニストとしても活躍。今回の人事で本社役員に就任する(撮影:大河原克行)

今回の人事では女性の登用も注目された。パナソニックは2011年に初の女性役員が登場しているが顧問に退いており、目下のところ、女性役員はゼロだ。そこに小川理子氏が新たに本社役員に就任し、AP社の常務にも就く。

小川氏はジャズピアニストとしても活躍中で、ソロでの演奏やオーケストラとの共演をこなしている。音楽家としてのキャリアも活かしながら、2014年には高級音響機器ブランド「テクニクス」復活に貢献した。今後も、テクニクス事業を率いることになる。

小川氏も含め、新体制の役員は47人。1年前の41人から6人増えることになる。津賀社長は車載やBtoBソリューションなど5つの事業分野と、日本、欧米、その他の3地域を掛け合わせた「5×3のマトリックス」という重点戦略を打ち出しているが、「5×3のマトリックスの戦略を推進するために、役員数を増やし、経営基盤を固めた」(同社広報)という。

BtoBシフトの成果で業績回復の途上にあるパナソニック。津賀社長は今回、さらなる復活へ向け、社内の融合と次世代への委譲を見据えた役員人事を敢行したといえる。

許斐 健太 『会社四季報 業界地図』 編集長

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このみ けんた / Kenta Konomi

慶応義塾大学卒業後、PHP研究所を経て東洋経済新報社に入社。電機業界担当記者や『業界地図』編集長を経て、『週刊東洋経済』副編集長として『「食える子」を育てる』『ライフ・シフト実践編』などを担当。2021年秋リリースの「業界地図デジタル」プロジェクトマネジャー、2022年秋より「業界地図」編集長を兼務。

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