創業家の影響力が色濃く残る紳士服業界。かつて価格破壊をもたらした大手チェーンが、軒並み袋小路に陥った根因はどこにあるのか。
「オーナーがいないとダメな会社と思われないよう、これからは社員がもっと主体的に動いていかないと」。国内2位の紳士服チェーン・AOKIホールディングス(HD)の幹部は、現状への危機感をにじませる。
東京地検特捜部は9月6日、東京五輪・パラリンピックのスポンサー契約や公式ライセンス商品の販売などに関する贈賄の罪で、AOKIHDの創業者で元会長の青木拡憲氏、その弟で元副会長の青木寶久氏、事業会社のAOKI元社長でAOKIHD執行役員の上田雄久氏をそれぞれ起訴した。
AOKIHDは9月5日付でガバナンス検証・改革委員会を設置。社外取締役や弁護士らで構成し、不正の原因究明や再発防止策の検討などを行っていくという。
洋服の青山、AOKI、コナカ、はるやま――。国内の紳士服4大チェーンは、それぞれ創業者の名前から店の屋号が付けられている。4社とも社長や会長に創業家出身者が君臨し、上位株主にも創業家一族や創業家の資産管理会社が名を連ねる。
創業家の影響力は今なお絶大だが、ここに来てその経営は大きな岐路を迎えている。
創業家以外の社長が立て続けに誕生
6月29日。AOKIHDが運営する結婚式場「アニヴェルセル表参道」で同社の定時株主総会が開かれ、同日付で拡憲氏と寶久氏が会長と副会長をそろって退任した。総会に出席した関係者によれば、拡憲氏は両手を上げて晴れ晴れしく退任のあいさつを行ったという。
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