キャデラック「初のEV」LYRIQに見た納得の出来 デザイン・走り・技術に「伝統と革新」が巧みに融合

拡大
縮小
キャデラック初のBEV「LYRIQ(リリック)」
重くても速い(写真:ゼネラルモーターズ)

車重は約2.5トンにもなるが、動力性能は十分以上。いや、電気モーターならではの優れたレスポンスのおかげで、積極的に速いと評したくなるだけのものを持っている。それでも、アクセルを踏み込んだ瞬間に蹴飛ばされるように加速したりするといったことはなく、運転はしやすい。BEVだからといって過激に味付けたりしていないのは、BEVだろうと内燃エンジン車だろうと、作りたいのはキャデラックそのものだからだろう。

乗り心地も非常に柔らかく、これもキャデラック、あるいはアメリカ車に誰もが期待する通りの仕上がりだが、上下に揺さぶられるような道でも収まりは悪くないあたりは見事。コーナリングも安心感が高く、完成度は高い。

後輪駆動にしたのは「キャデラックだから」

気に入ったのは直線に向けてステアリングを戻しながら徐々にアクセルを踏み込んでいったときの挙動だ。軽く沈ませたリアから押し出していくような加速感は、いかにも後輪駆動らしく、クルマ好きなら堪らないものがあるだろう。

こうした味付け、そしてそもそも1モーターモデルを前輪駆動ではなく後輪駆動にしたのは、エンジニア氏によれば「キャデラックだから」だそうである。デザインの話と似ていて、すべて新しい技術でありながら“らしさ”はしっかり継承する。このさじ加減が実に巧みだ。

そう、デザインもこの走りも、そして技術的な面でも、多様性がいかんなく発揮され、伝統と革新が巧みに融合された、まさに今のアメリカらしいプレミアムBEVに、リリックは仕上がっていた。日本には2023年春の導入を目指しているということである。

東洋経済オンライン「自動車最前線」は、自動車にまつわるホットなニュースをタイムリーに配信! 記事一覧はこちら
島下 泰久 モータージャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

しました・やすひさ / Yasuhisa Shimashita

1972年生まれ。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。走行性能からブランド論まで守備範囲は広い。著書に『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT