公立小で全国初、豊橋市・八町小「日本語と英語で学ぶイマージョン教育」の中身 国語と道徳以外の教科と学校生活は主に英語

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

イマージョン教育を実践するには、さまざまな資質を兼ね備えた“よい教員”が欠かせません。その意味においても、授業準備をしっかり行い、視聴覚教材を巧みに使って子どもたちの問いや発見を引き出す八町小の先生方の指導力はすばらしく、視察に訪れるたびに引き込まれています。

――公教育でイマージョン教育に取り組む意義について教えてください。

原田 日本の公教育は、誰もが一律に教育を受けることができ、誰もが読み・書き・計算ができるようになる非常に優れた制度です。しかしその反面、画一的な側面もあります。これだけグローバル化が進むこれからの時代にプラスアルファで必要なのは、多様性であり、子どもたち一人ひとりの個性を生かす教育であると思います。

英語力を伸ばすだけでなく、英語による授業で教科の学力をつけるイマージョン教育には、授業や学校生活を通して自分の意見を伝えたり、周りの友達の意見を受け入れたりしながら、より多様性を認められるようになるというメリットがあります。

日本では90年代から私立の学校でイマージョン教育が始まっていますが、公教育における新しい手法としてイマージョン教育が取り入れられたことは、非常に意味があることだと思います。イマージョン教育を実践するためには、財源や教員の確保といった課題もあると思いますが、八町小の取り組みを機に、少しずつ根付いていくことを期待しています。

――イマージョン教育に取り組む子どもたちや保護者にとって大切な視点とは?

原田 イマージョン教育は、「外国語による教科学習を少なくとも5年間、学校のカリキュラムの50%を継続して行う」と定義されてはいますが、小学校に入学してから卒業するまでの6年間でやめてしまうと、蓄えた力を継続させることは難しいと感じます。

少なくとも小・中の9年間、理想的には小・中・高と、長期的な視点で取り組み続けることが、英語力、教科学習の向上に確実につながるのではないでしょうか。

――イマージョン教育を含め、日本の子どもたちの英語力を底上げするための英語教育のあり方について、先生のお考えを聞かせてください。

原田 これまで日本の英語教育において、教室は、「将来役に立つために」と語彙や文法など「英語を“教える場”」でしたが、これからは、「英語を“使う場”」として機能していくことが大切です。英語教育に携わる教員には、より専門的な知識を学び、子どもたちが「もっと話したい」「もっと英語でコミュニケーションを取りたい」と思えるような授業づくりが求められています。

CLIL(Content and Language Integrated Learning=内容言語統合型学習)という英語の教育方法が注目されつつあります。イマージョン教育などからヒントを得てヨーロッパで始まり、現在は世界各国で導入されている教育アプローチで、例えば理科で火山について学んだら、英語の時間でも火山について英語で学ぶ時間をつくるなど、「英語を」学ぶのではなく、「英語で」教科横断的に学ぶ方法です。

英語の授業に可能な範囲でこのような手法を取り入れることで教室がコミュニケーションの場となり、子どもたちのモチベーションアップ、英語力の向上につながるのではないでしょうか。

(注記のない写真:八町小提供)

東洋経済education×ICTでは、小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。
長島 ともこ フリーライター&エディター

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ながしま ともこ / Tomoko Nagashima

育児、教育、PTA、暮らしのジャンルを中心に、書籍、雑誌、PR紙、WEB媒体において取材、執筆、企画、編集、講演等の活動を行っている。また、自身のPTA活動や記事執筆を機に、全国のPTA仲間と「PTA・保護者組織を考える会」を立ち上げ、情報発信やイベントの運営、PTAやP連からの相談活動等を行う。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事