公立小で全国初、豊橋市・八町小「日本語と英語で学ぶイマージョン教育」の中身 国語と道徳以外の教科と学校生活は主に英語

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本校は市内の中心地区にあるため、校区外の生徒は市電などの公共交通機関で通学することになりますが、その場合は、保護者の方に、当番で通学の付き添いをするなどの協力をお願いしています。

日本語話者の教員と英語話者の教員による2人担任制の授業

――「イマージョン教育コース」では、どのような体制で、どのように授業を行っているのでしょうか。

稲田 各クラス、日本語話者の教員と英語話者の教員による2人担任制で授業を行っています。日本語話者の教員については、小学校の授業づくりの経験を十分有し、かつ英語を用いて授業ができる英語力を持つ教員ということで、小学校教員と中学校英語の教員免許を併せ持つ人員を配置しています。

英語話者の教員は、市内の学校で長年ALT(外国語指導助手)として英語教育に携わってきており、その多くが市内に居を構えて生活しています。豊橋市の教育についてよく知っている教員がチームとなって英語教育に携わっているのは、当校のイマージョン教育の強みであると自負しています。

授業は文科省の学習指導要領に沿った形で行い、日本語の教科書に加え、教科書の内容が英訳された補助プリントを使用しながら学習を進めています。児童の学年や英語力により、英語のプリントだけで学習を進められる子もいれば、日本語の教科書を横に並べ、逐一確認しながら進める子もいますので、個々人に応じて教科書と補助プリントを上手に使いながら学びを深めていきます。

――1年生の1学期から、英語による授業が始まるのですか? 授業中に意見を述べるときも、英語を使わないといけないのでしょうか。

稲田 授業に加え、朝の会なども基本は英語で行いますが、例えば入学直後の4、5月は、給食の配膳方法や学校での過ごし方などについて理解してもらうのが最優先です。時と場合に応じ、日本語でもきちんと指導し学校生活に慣れるように支援していますし、授業において、日本語を使用することもあります。

また、入学時は、英語で授業を受けるのが初めての子から帰国生まで、児童の英語力には差があります。授業中に意見を述べるときは、「日本語でも英語でもOK」というルールで子どもたちに任せています。英語を強いることで話し合いの溝が深まらないよう、教員が必要に応じてサポートしています。

――例えば、算数の「分数」や「小数点」「桁」など日本語による説明でも理解が難しい単元もあると思うのですが、英語による説明で、子どもたちは理解できるのでしょうか。

稲田 子どもたちの吸収力の高さは想定以上で、さまざまな学習を、スポンジが水を吸うようにすうっと理解していると認識しています。

授業の中で大事な言葉は教員が繰り返し使い、リズムに合わせて反復したり、視覚的にわかりやすい工夫を施していたりするため、日常生活ではなじみのない英単語であってもその概念が日本語を介さずに直接結び付き、学んでいる内容に強い関心を持ちながら理解を深めている様子です。

学習内容の定着度は日本語によるテストで都度図っていますが、通常学級と遜色ありません。

――「子どもの頃の第二言語習得が、母語に悪影響を及ぼす」という説も聞かれます。

稲田 英語を用いて行う授業以外の学校生活や家庭生活においては、母語である日本語で生活している児童がほとんどです。休日や長期休業においても、英語の塾に行ったり、国際交流イベントに参加したりすることなどを除いては、母語で家族と過ごします。1日、1週間単位で考えれば、生活の多くは母語を用いて過ごしており、「イマージョン教育コース」への入学が母語の習得に大きな影響を及ぼすものではないと考えています。

「イマージョン教育コース」が開設されて2年半が過ぎますが、日本語習得に問題が生じていることは認識しておりません。私自身、この2年間は、イマージョン教育コースの3年生と6年生の授業を担当していますが、国語の授業でも日本語習得への影響は感じられません。

今後も継続して検証を重ねていくことが必要と考えておりますが、少なくともこの2年間の国語の学習については、知識・理解、思考・判断・表現のいずれの観点においても向上していることが、評価テストの結果からも得られています。

英語を「聞く」力が飛躍的に伸びる

――イマージョン教育3年目にして感じる児童の成長について教えてください。

稲田 本校がいちばん大事にしている教科学習の習得が図れていることがベースにありつつも、子どもたちのコミュニケーション能力は非常に高まっていると思います。また、時間がかかると思っていた英語によるアウトプットについても、1年目は日本語話者の教員が子どもに寄り添って発話の言葉を支援しながら行っていましたが、最近では自分の意見を英語で言える子どもが増えてきた印象です。授業の振り返りを、自ら英語で書けるようになるなどさまざまな成長が見られます。

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