つくば市立谷田部中「デジタル教科書活用のメリット」公立でこそ期待の理由 適切なアプリとの組み合わせで効果アップ

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GIGAスクール構想の一環として、文部科学省はデジタル教科書の本格導入を2024年度に計画している。22年度4月から全国の小・中学校に外国語(英語)のデジタル教科書が無償で提供されているが、茨城県つくば市では、それに先立つ形で21年度の秋からデジタル教科書の実証研究を開始している。対象は市内の12の公立小・中学校で、輝翔学園つくば市立谷田部中学校はそのパイロット校のうちの1つだ。まだメリットもデメリットも手探りの新しい教材だが、子どもたちの反応や教員の手応えはどのようなものなのか。同校でデジタル教科書を用いて英語を教える小松﨑亮氏に、2年目となった指導の実感を詳しく聞く。

「デジタル教科書のほうがいい」今や6割の多数派に

茨城県の輝翔学園つくば市立谷田部中学校では、2021年10月から、デジタル教科書導入の実証研究を行っている。同校の英語科担当教諭・小松﨑亮氏も、新たな教材を使用した指導で2年目を迎えた。

「昨年度は中学1年生を、今年は中学3年生を担当しています。どちらの学年も問題なくデジタル教科書を使いこなしていますが、1年生のほうが最初に触れるときの好奇心が強く、自由な発想があるように思いました。一方で、3年生のほうが個別最適な学習につながる活用の仕方をしているようにも感じます」

小松﨑氏自身はもともとICT活用に関心が高く、市のパイロット校として選ばれたときも前向きに取り組むことができたと言う。その小松﨑氏の態度も、生徒や保護者の姿勢に影響していたかもしれない。端末導入時こそネットリテラシーに対する不安の声が上がったが、デジタル教科書の導入についてはスムーズに理解が得られた。

だが、子どもたちの戸惑いは完全なゼロではなかったようだ。

「デジタル教科書を使い始めてから、生徒たちに紙面とデジタルのどちらがいいかアンケートを取りました。そうしたら、大半の生徒が『紙面のほうがいい』と答えたのです」

情報を得るとき、紙のほうが安心感を得られると思う大人は多いだろう。意外なことかもしれないが、現代の子どもたちも、当初はそんな大人と同様だったと小松﨑氏は続ける。

「導入初期は、今日は紙面の教科書だけを使う日、今日はデジタル教科書だけの日……というふうに、教材を切り替えて授業を行いました。生徒たちが両者の特性やデジタル教科書の操作方法をつかんだら、その後は本人に任せるようにしました。これは何事も自己決定できる生徒を育てたいという思いでの方針です」

教員が強制せず、場面や状況に合わせて使いやすいほうを、生徒自身が選んで使う。その形式に慣れた頃に再度アンケートを取ると、デジタル派と紙面派の割合が逆転していた。今では6割の生徒が「デジタルのほうが使いやすい」と答えるそうだ。

「中には『今はデジタルのほうが安心できる』という生徒もいて、感覚の変化に驚きました。これはとにかく慣れの問題なのだと思います。中学生とはいえ、やはり少しでも早い段階でデジタル教科書に触れることで、ICT機器の使用への抵抗も少なくなるようです。このICTスキルが、いずれ自己調整学習にもつながっていくと思います」

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