つくば市立谷田部中「デジタル教科書活用のメリット」公立でこそ期待の理由 適切なアプリとの組み合わせで効果アップ
同氏の授業中、例えば英作文の時間には、手書き派の生徒とタイピング派の生徒が混在している。教科書を読む際も、パソコン画面をピンチ操作する生徒もいれば、紙と画面の両方をごく自然に見比べる生徒もいる。

デジタル教科書が向いていること、向いていないことは
小松﨑氏の授業では、身に付けたい技能やシチュエーションに合わせたアプリケーションを併用することで、デジタル教科書のメリットをさらに生かしている。授業の冒頭では、クイズ形式の「Kahoot!(カフート)」で語彙力を鍛えつつ、生徒の関心を引き寄せることもある。教科書を音読する課題はMicrosoft社の「Reading Progress」で採点まで行い、生徒へのフィードバックでやる気を高めているという。いずれも生徒に結果が見えやすく、ゲーム感覚で取り組むことができるという特徴がある。小松﨑氏は「教員が教え込むのではなく、生徒自身が活動していると感じられることが重要だ」と補足する。

「デジタル教科書は、英語学習に必要なインプットとインテイクに向いていると思います。反対に足りないと思うのは、アウトプットのための生きたやり取りです。こうした点を補うアプリを正しく選び、デジタル教科書と掛け算をすることで、今後は会話など、コミュニケーション能力向上のための時間をさらに増やしていきたいと考えています」
今後に期待することとしてもう一つ、小松﨑氏は「副読本の充実」を挙げた。多彩な教材で授業内容が深まり、より実践的な課題設定が可能になったとき、それをアシストする別の本が欲しいと感じている。デジタル教科書推進の取り組みは小学校が先んじていたため、デジタルの副読本も、中学校より小学校のほうが充実している状況がある。
「小学生向けの音声付き単語集や表現集がありますが、中学生向けに、もう一歩進んだデジタル教材があるといいなと思います。生徒が教科書を超えた表現をしたいと思ったときに活用できる内容で、さらに誰もがフラットに使える内容だとベストですね」
そうした教材でも、紙の教科書との併用でそれぞれのよさを生かしたいと言う。あくまで生徒が効率よく、自分に合ったやり方を自己決定して学ぶことを重視している。
多様な生徒と教員の「個別最適」にデジタルを生かそう
英語科におけるデジタル教科書の強みは何か。小松﨑氏はこの問いに「いろいろありますが、やはり音声でしょう」と答えた。
「教員が『聞かせたい』と思う単語や英文を、すぐに母国語話者のような発音で再生してくれるのがとてもありがたいですね」
