つくば市立谷田部中「デジタル教科書活用のメリット」公立でこそ期待の理由 適切なアプリとの組み合わせで効果アップ

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授業に質の高い発音が定着したことで、リスニングやスピーキングの力が伸びていると手応えを語る。小松﨑氏がデジタル教科書の価値を最も感じるのは、生徒一人ひとりが「何度でも」「いつでもどこでも」、そして「自分のペースで」学べる、いわゆる「個別最適な学び」が実現できる点だ。

「本校は公立なので、先へ先へと進みたい子もいれば、いわゆるスローラーナーの生徒もいて、みんなが一緒に学んでいます。例えば音声データなら何度でも繰り返し聞けるし、ゆっくりにしたり速度を上げたり、それぞれの生徒が望むペースで聞くこともできます」

文字を認識するのが苦手な生徒も、デジタル教科書なら拡大して読むことができる。これはリーディングのスキルアップにつながるし、音声データとともに「音と文の一致化」を助けることにもなる。また、授業で配布するプリントも減っているので、持ち物の管理が難しい生徒の負担も減らせる。授業中に「紙の提出物をなくした」などという申し出に対応する時間が減り、学びの本分に時間を割けるようになった。これは理解の早い生徒にとってもメリットになるだろう。課題提出もオンラインでスムーズにできるため、授業内で生徒をせかすことも少なくなった。

「家でじっくり課題に取り組むようになったことで、思考力・判断力・表現力といった、新学習指導要領で目指す力も伸びてきていると感じます。動画や音声にいつでもどこでも触れることができ、生徒の生活の中に、よりシームレスで個別最適な学びが根付いてきているようです。50分間の授業では十分でない内容の底上げをし、くり返し練習することが大切だと思います」

小松﨑 亮(こまつざき・りょう)
輝翔学園つくば市立谷田部中学校教諭(進路指導主事)

ICT教育の試みは、私立校での取り組みが注目されがちだ。さまざまな点で余裕があるため、先進的なプロジェクトも実施しやすいだろう。だが「自分のペースで」学べることにより、多様な生徒が一緒に学ぶ公立校で実感される利点は大きい。

小松﨑氏は「私は発音にあまり自信がないのですが、デジタル教科書はその苦手なことも補ってくれます」と笑い、「生徒それぞれの苦手分野の底上げをし、自信をつけてほしい」と語る。デジタル教科書とアプリの活用で差を補い、個別最適な学びの実現を目指す同氏の授業。この方針は、生徒のみならず教員にとっても大きな恩恵がありそうだ。

(文:鈴木絢子、写真:今井康一)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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