公立小で全国初、豊橋市・八町小「日本語と英語で学ぶイマージョン教育」の中身 国語と道徳以外の教科と学校生活は主に英語
――イマージョン教育によって高まる英語力は、英語4技能(聞く、話す、読む、書く)のうちどれだとお思いになりますか?
稲田 イマージョン教育で最初に成果が表れやすいのは、間違いなく「聞く力」でしょう。そのほかは判断が難しいのですが、「聞く力」の次に力が発揮されるのは、「話す力」という印象です。
本校では、英語で話す際、細かな文法的な間違いにはこだわらず、まずは自分の思いが相手に伝わることを最優先する雰囲気づくりも行っているため、子どもたちは間違えることに対して恐れがありません。このような心理的安全性も、話す力の向上につながっていると思います。

――「イマージョン教育コース」の保護者の方からは、どのような声が聞かれますか?
稲田 英語のリスニング力の向上をはじめとして、英語でのコミュニケーション力の習得については期待以上であるという声が多く聞かれます。校区外通学の送迎や家庭学習のサポートなど、保護者の方にお願いすることは多いのですが、多くの方がわが子の頑張りや成長を感じられ、そうした苦労も大きな負担に感じられないとおっしゃってくれています。
150年の歴史と豊かな文化に恵まれ、地域の方々に支えられている本校の教育活動について関心を寄せ、多くの保護者の方に、PTA活動やボランティア活動にも積極的にご参加いただいています。
――22年8月、市内の小学5・6年生を対象に、八町小教員によるイマージョン体験活動「スーパー・イングリッリュ・チャレンジ」を開催されたそうですね。
稲田 2日間で約150名の児童が、イマージョン教育による算数、理科、社会の授業を体験しました。参加した子どもたちにとっては、「こういう英語の学び方があるのか」「こんなふうに学校で学んでいる同級生がいるんだ」など、大きな刺激になったことと思います。
今回、本校のイマージョン教育コースの児童にもボランティアとして参加してもらったのですが、学習者モデルや参加児童間の交流を図る役割を担うことで、自分自身の成長を実感できたのではないでしょうか。授業は市内の教職員にも公開し、これまでの当校の実践を共有することができました。

当面の目標としては、イマージョン教育コース開設当初に入学した子どもたちが5・6年生になる3年後に自分の思いをよりスムーズに英語で話すことができるようになることを目指し、授業づくりに取り組んでいきたいと思います。
イマージョン教育は長期的な視点が大切
――原田さんは、幼児期からの英語教育の有効性や重要性についての研究活動や研究結果の発信を行う民間の研究機関「ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所(World Family's Institute of Bilingual Science)」学術アドバイザーとして、21年から八町小の授業視察や意見交換を行ってきました。

早稲田大学教育総合科学学術院教授
ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所学術アドバイザー
早稲田大学教育学部英語英文学科卒業後、高等学校の英語教員を経て、筑波大学大学院教育研究科教科教育専攻英語教育コースで修士号を取得。短期大学に勤務後、ロンドン大学大学院ユニバーシティ・カレッジで音声学修士、ロンドン大学教育研究科(IOE)を経て、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)にて応用言語学博士を取得。その後、オレゴン大学で教鞭を執り、2005年から現職。13年から14年まで、UCLAの客員教授兼研究員。専門は、第二言語習得、外国語の音声習得、英語教育、バイリンガル教育など。イマージョン教育における音声習得に関しての論文を、Studies in Second Language Acquisitionなどの国際学術誌に掲載
(写真:原田氏提供)
原田 八町小は、20年からイマージョン教育を始めてまだ3年目なのにもかかわらず、子どもたちは、先生の指示を理解して問題を解決したり、自分で意見を述べたりする力がついてきていると感じます。22年8月のイマージョン体験活動も視察しましたが、イマージョン教育コースの子どもたちが、体験にきた子どもたちをどのようにサポートしたらよいか一生懸命考え、行動することを通して自身の英語力への自信を深めている様子でした。
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