[Book Review 今週のラインナップ]
・『自民党の女性認識 「イエ中心主義」の政治指向』
・『イーロン・マスクの面接試験』
・『「想定外」をやっつけろ! 検証・なぜ墨田区はコロナ禍第5波で重症者を出さなかったのか』
・『一生モノの物理学 文系でもわかるビジネスに効く教養』
[新書紹介 3分で4冊!サミングアップ]
・『22世紀の民主主義』
・『国際報道を問いなおす』
・『農家はもっと減っていい』
・『「名コーチ」は教えない』
評者・専修大学専任講師 村上彩佳
日本の女性議員率は9.9%で、世界188カ国中164位(列国議会同盟データ、対象は日本の場合衆議院)。G7でトップのフランス(37.3%、37位)や6番目の米国(28.6%、68位)よりもずっと低く、東アジアの中国(24.9%、95位)や韓国(18.6%、125位)と比べても低い。世界の女性国会議員率が26.1%と過去最高に達する中、なぜ、日本の女性議員は少ないのか。
政治の制度やルールは、男性主導で作られてきたため、おのずと男性中心的な性格を持ち、女性の参加を阻んできた。加えて、「政治は男の仕事」といった意識も、女性の政治参加の壁になる。
日本政治のこうした公式・非公式の制度やルールには、戦後政治を率い、長く政権の座にあった自由民主党が関わっている。本書は、自民党の「女性認識」を検討することで、日本の女性を政界から遠ざけている要因をあぶり出す。
普通の女性を阻むタテ型組織と世襲優位
著者は、自民党の女性認識を反映した現行の政治のルールには、「イエ中心主義」があると突き止める。この語は著者の造語であり、女性を一個人としてではなく、「イエ」に従属する妻・母・娘として認識する政治指向をさす。「イエ中心主義」は、公式・非公式の政治制度に埋め込まれており見えにくい。この実態をつかむために、著者は2つの手法を用いる。
まず、自民党の政治指向として「イエ中心主義」が形成され、再生産されてきた過程が経時的に分析される。自民党が組織政党として発展する中で、どんな組織像や政策が目指されてきたのかが読み解かれる。そして、派閥中心で個人後援会に下支えされた自民党のタテ型のピラミッド組織こそが、「イエ中心主義」の中核にあると描き出される。
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読み頂けます。
登録は簡単3ステップ
東洋経済のオリジナル記事1,000本以上が読み放題
おすすめ情報をメルマガでお届け