2年目迎えた松茂町の「STEAM教育」、町を挙げて取り組むその中身とは? 秘訣は「町・教委・学校・企業」の円滑な連携
「現状、日本ではプログラミング授業も全国で1割ほどしかできていない印象で、STEAM教育に関してはほぼ始まっていないといえます。プログラミング教育がコンピューターを活用したプロジェクト学習に発展していかないのも、関係機関が一体となっている自治体が少ないからだと感じていますが、そんな中、松茂町の環境は大変珍しく、三位一体の体制だからこそSTEAM教育を実現できているのだと思います。私も伴走させていただき、これほど手応えを感じるのは初めてです」(中村氏)
丹羽氏も、「専門の知識を有する民間企業と連携したことでSTEAM教育の狙いが明確になり、教職員と子どもの学びの意欲の向上につながったように思います」と、公教育と民間が補い合う有効性を評価する。
現在、松茂町の子どもたちは2021年度に学んだ下地があるため、今年度は発展的な課題に取り組みやすくなっており、「これが来年、再来年と続いてカリキュラムマネジメントが充実していくと、松茂町全体の力は必ず上がっていくでしょう」と中村氏は期待する。
丹羽氏は、日本の子どもたちの自己肯定感の低さや学ぶ意欲の問題などからも、「STEAM教育を子どもたちの自己肯定感の向上や、キャリアを含めた『生き方教育』にもつなげていければ」と、展望を語る。しかし、課題もある。
「学校も、毎年子どもたちがワクワクする新たな仕掛けをつくることが重要。そのためにはSTEAM教育を浸透させる必要があります。教員の異動がある中でも、『松茂町=STEAM教育』を伝える伝承者を継続的に育てることも課題です」と、丹羽氏。櫻間氏も、「継続のためには、校長がなぜSTEAM教育を行っているのかを教員全体にしっかり落とし込まないといけないと考えています」と話す。
また、各学校に合わせたプログラムにしているので、スキルなどにばらつきが出ている点も課題だ。「この学年ならこの内容の授業」といったパッケージ化はできておらず、「ここがある程度クリアにならないと、公教育でのSTEAM教育の普及は難しい」と中村氏は考えている。
「しかし、今後の日本社会や地域社会にとっても、誰もが納得感を持って生き生きと幸せな暮らしができるようになるためにも、子どもたちが将来所属するコミュニティーで役立つものをつくれるスキルや態度を育むことは重要です。その手段として、STEAM教育は有効だろうと思っています」(中村氏)
(文:酒井明子、注記のない写真:松茂町教育委員会提供)
東洋経済education × ICT編集部
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