2年目迎えた松茂町の「STEAM教育」、町を挙げて取り組むその中身とは? 秘訣は「町・教委・学校・企業」の円滑な連携

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「とくに中学2年生は、地元の人の困り事を解決する企画を考えた際、たくさんのユニークなアイデアが出てきました。例えばクレーンゲーム機の中に規格外の野菜を入れて楽しみながら食品ロスを減らす、地元名産の梨の皮の香りを生かしたお香を作るなど。作る側としての視点が新鮮なのか、子どもたちは楽しく取り組んでいました」(中村氏)

地域の課題解決プロジェクトに挑んだ中学3年生からは、実際に町の大人たちを動かす提案も生まれた。

「生徒たちがグループに分かれて松茂町で解決したい課題を探し、代表の4チームが町議会議員の方々に課題と解決案をプレゼンテーションしたのですが、生徒が問題視した通学路に死角をつくっている危険な木は、実際に伐採されることになりました」(中村氏)

松茂中学校校長の櫻間伸章氏も、生徒たちの成長を肌で感じている。

櫻間 伸章(さくらま・のぶあき)
徳島県板野郡松茂町立松茂中学校 校長
同県板野郡藍住町立藍住中学校教頭と同県美馬市立穴吹中学校教頭を経て2022年度より現職

「子どもたちが自分たちで考え、本気で大人たちにぶつかってくる機会が増えました。例えば文化祭で行いたいことなどについて、生徒たちが自ら校長室に来て関係者に提案をするのです。STEAM教育で得た学びが生きていると感じます」(櫻間氏)

STEAM授業は、前述の交流拠点施設「マツシゲート」も活用している。長原小学校は、3Dプリンターやレーザーカッターなどの先端機器をそろえる「ファブスペース」でよく授業を行っており、松茂中学校の2年生たちも商品のデザインやプロダクトを作る際にここのデジタル機器を活用した。

また、放課後の居場所づくりとして、松茂中学校では顧問を置かないイノベーション・ラボクラブもつくり、所属する生徒約10名が放課後にファブスペースでものづくりを楽しんでいる。今年はロボットコンテストに向けて本格的にチームで取り組むそうだ。最近では、不登校の子どもの居場所になったケースもあり、ファブスペースに顔を出すことをきっかけに、学校に行けるようになった子もいるという。

松茂中学校の公認キャラクター「まっちゅん」をレーザーカッターでプリント(左上・右上)。イノベーション・ラボクラブの生徒たち(左下)。プログラミングロボット(右下)や3Dプリンターなどファブスペースはデジタル機器が充実

このほかマツシゲートでは、町の取り組みとして定期的に小学校高学年と中学生を対象に「STEAM学び隊」と称した講座が開かれているほか、STEAM教育イベントも年に数回開催されており、町のSTEAM教育の拠点となっている。

マツシゲート(上)、鳴門教育大学の講師による「STEAM学び隊」の講座(左下・右下)

「松茂町=STEAM教育」を目指して

松茂町は町長、教育長、校長が一枚岩となっており、中村氏は「この奇跡的な環境がSTEAM教育の秘訣ではないか」と語る。

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