ニセコ町長が激白「私が鉄道廃止に同意した理由」 倶知安とリゾート地区を結ぶ「新交通」を検討

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――初期投資額の152.8億円と経常的な赤字額の25億円を単純に沿線自治体の9市町で按分すると初期投資額だけで10億円以上、毎年の赤字額が2.7億円程度になります。

鉄道が必要であれば、この金額を土木関連の予算額6億円の中から負担しろと。物理的にニセコ町としては出せる金額ではなかった。

ニセコ駅横に展示されているニセコエクスプレスの保存車両(筆者撮影)

――新幹線の倶知安駅とスノーリゾート地区を結ぶ新交通システムとは、具体的にどのような構想なのですか。

あくまでも構想段階のものであるが、背景としては新幹線開業後にニセコ地区にバスの輸送力を超える観光客の来訪が予想されることや、今後、必要となるバスの台数や便数を確保することが難しくなるということがある。

また、全国的なバスドライバー不足に加えて、昨今では世界的な半導体不足やコロナ禍の影響によりバス車両そのものの納期遅延も問題化している。こうしたことから、倶知安駅とスノーリゾート地である花園地区、ひらふ地区、東山地区を結ぶバスではない交通機関が必要になると考えている。

2018年には倶知安町の西江栄二前町長から同地区を結ぶモノレールの建設構想についての言及があった。さらに言えば、こうした諸問題から、並行在来線を廃止した後の代替バスを本当に持続的に運行し続けることができるのかという問題意識も持っている。

鉄道による代替ルートは必要だ

――バスだけではなくトラックドライバー不足やトラック車両の納期遅延問題も深刻化しています。

有珠山での火山災害時の貨物列車の代行輸送については、札幌―苫小牧間をトラックでピストン輸送して苫小牧港からフェリーで行うという計画があるが、いざというときに本当に機能できるかは不透明なままだ。

また、有珠山以上に深刻なのが、苫小牧市北西部にある樽前山の火山災害だ。樽前山で火山災害が起きた場合には、新千歳空港から苫小牧港にわたる広大なエリアで最大で100cm以上の火山灰が堆積するという予測が気象庁より発表されている。こうなっては、空港や港湾機能は完全にマヒしてしまうことになり、トラックによるピストン輸送どころの話ではなくなってしまう。

――国土強靭化の観点からも鉄道による代替ルートは必要になるということですね。

国土強靭化と鉄道在来線の関係についてはもっと議論をされてもよいのではないかと考えている。

――しかし、沿線自治体が並行在来線の存続をあきらめたことに対して北海道の鈴木直道知事から出されたコメントは「地域での議論のもとで下された大きな決断を受け止める」という表面的なものでした

鈴木知事がいったい何を考えているのか、問いただしたい気持ちはある。

櫛田 泉 経済ジャーナリスト

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くしだ・せん / Sen Kushida

くしだ・せん●1981年北海道生まれ。札幌光星高等学校、小樽商科大学商学部卒、同大学院商学研究科経営管理修士(MBA)コース修了。大手IT会社の新規事業開発部を経て、北海道岩内町のブランド茶漬け「伝統の漁師めし・岩内鰊和次郎」をプロデュース。現在、合同会社いわない前浜市場CEOを務める。

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