研究指定校への「ICT導入」、当初は保護者の反対強かった
どうすればICTを中軸に据えた学びの環境づくりができるのか。そんな質問に対する私なりの回答は「共通了解を探る」ということでした。
私が当時勤めていた小学校は、現在子どもたちに1人1台端末が整備されているGIGAスクール構想がまだ影も形もない、2017年度からICTをフル活用した研究をしている珍しい学校でした。総務省や市の研究指定を受けながら、プログラミング教育を基軸にICT活用授業を模索しており、私はそこでICT主任や研究主任として学校をリードする立場を務めてきました。
研究指定を受けた当初は、学校にICTを導入することへの保護者の反対意見がかなり強く、毎月のように全校保護者会を開いて説明してきました。主に健康被害や学力低下の懸念から「なぜうちの学校だけやらなきゃいけないのか」「全学年でICT実践をやめてほしい」という声も少なくありませんでした。
当時の空気感を思い出すと、コロナ禍の一斉休校を経験してGIGAスクール時代を迎えている今、隔世の感があります(笑)。
保護者の反対を正面から受けながら、その中で職員一丸となってICT教育を推進していくのはかなり難易度の高い舵取りでした。保護者の不安は子どもにも影響するし、プレッシャーの中にあっては担任の先生も後ろ向きになっていきます。その中で大切なことは、方法ももちろんそうですが、それ以上に「なぜICTを使うのか」「何のためにICTのスキルを身に付けるのか」といった目的の共有でした。
学校と保護者に加えて、先生同士の「共通了解」をどうつくるか
前回の記事でも触れましたが、学校教員は業種の特殊性や忙しさも相まって、どうしても社会の動きをキャッチしきれないことが多い気がします。当時の勤務校では推進リーダーとして、今日の社会構造やそこで求められる力がどのように変化してきているか、海外ではどのように教育が捉え直されてきているかを、個人の思いではなく事実ベースで共有するようにしてきました。事実ですから、理念や理想と違って「共通了解」できますよね。これは保護者に対しても、学校だよりなどで知ってもらうよう心がけてきました。