少数株主による経営陣交代の株主提案が可決された。提案したキム・ムイ氏は自ら社長に就任。なぜキム氏は歴史的勝利を収められたのか。本人に聞いた。
日本のコーポレート・ガバナンス(企業統治)史に残るであろう、少数株主の歴史的な大勝利だ。自身と自身の経営する会社の合計でわずか2.5%しか株を保有していない個人が会社に株主提案。その提案がSNS上で多くの少数株主からの「いいね!」を集め、ついには総会の議決で経営陣を全員放逐。さらに総会の直後に開いた取締役会で自ら社長に就いた。
株主提案をしたのは金武偉(キム・ムイ)氏。歴史的勝利の舞台は、独立系ベンチャーキャピタルのフューチャーベンチャーキャピタル(以下FVC)が6月23日に開催した株主総会である。会社提案はすべて否決された一方、株主提案はすべて可決された。
SNSで流れが徐々に変わる
金氏が経営陣交代の株主提案を行ったのは4月4日のことだ。提案理由として「現経営陣の戦略ミスにより事業モデルと株価が行き詰まり状態にある」「会社が長期低迷しても同じ経営者が任期続投を繰り返し、株主に他の選択肢が与えられない」と記した。
金氏の提案はシンプルだ。問題点を3つ指摘し、それぞれの解決策を明示した。
金氏は株主提案サイトを設け、FVCの経営についての問題提起を行った。TwitterなどSNSも駆使し、自らの意見を拡散していった。ネット上の掲示板では「2.5%しか保有していない株主が勝てるはずがない」と厳しい書き込みが相次いだ。が、金氏自ら説明を書き込むことで徐々に流れを変えていった。
金氏は上位株主約1100人に向けて、提案内容を説明する文書を速達で発送した。その中から返事が来た株主20~30人と直接連絡を取り合った。日本全国、どこにでも会いに出かけた。札幌や広島、沖縄など各地からYouTubeで動画配信も行い、FVCの問題点について訴え続けた。
最初は静観していたFVC側も、6月中旬になると焦りを見せ始める。総会を目前に控えて、株主提案への反対意見を2日に1度、13日、15日、17日と3回にわたってリリース。3回目のリリースのタイトルは「最後のお願い」と切実だった。各メディアのインタビューにも応じ、会社提案への支持を訴えた(松本直人前社長の当時のインタビュー記事はこちら)。
この間、FVC株を7.4%保有する名古屋の不動産会社DSG1が金氏に議決権行使を委任したことが判明。また、従来ならば総会1週間前には賛成票の8割を獲得できていたのに、今年は4割程度にとどまっていた。
株主提案から3カ月弱という限られた期間で金氏はなぜ勝てたのか。金氏を直撃した。
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