忍び寄る「サル痘」、日本の臨戦態勢は十分なのか 重症化率は低いがウイルスが変異する恐れも
現在判明している感染経路は、サル痘ウイルスを持っているおそれのある動物や人との接触だ。飛沫のほか、血液や体液、そして衣服や寝具に触れることで感染する可能性もある。感染者との直接接触がない限り感染リスクは低いとみられるが、森川教授は「この状況が続くと、人から人へ感染しやすいウイルスに変異する可能性がある」とみる。
実際、症例には変化が見え始めている。
WHOの報告では、今年報告されたサル痘患者に、従来と異なる症状が確認された。サル痘の潜伏期間は平均12日で、感染するとまず、発熱や頭痛などの症状が現れるとされてきた。それが今回流行しているサル痘では、発熱や悪寒などがなく、突然発疹が出るケースも見られるという。
有効性ある天然痘ワクチンは政府が備蓄
感染拡大に備えた国内の手立ては十分なのか。
日本には現時点で、サル痘用として認められたワクチンや治療薬はない。ヨーロッパ諸国などでは、かつて流行した痘そう(天然痘)と症状が似ていることから、天然痘のワクチンや治療薬がサル痘向けに使用されている。
天然痘ワクチンは、サル痘におよそ85%の発症予防効果があるとされる。しかし、こうした天然痘用のワクチンや治療薬であっても、日本で新たにサル痘向けに薬事承認をしようとすれば、一般的な審査では1年ほどかかる。そのため厚労省はワクチンと治療薬に関して、冒頭のサル痘に関する「臨床研究」を立ち上げた。
天然痘自体はすでに流行が収まっているため、ワクチンを作る国内メーカーは限られる。ただ、日本政府はバイオテロへの備えとして、天然痘ワクチンを備蓄している。備蓄数や、製造元のメーカーは公表していない。
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