偏りを恐れ批判を嫌う、選挙に行かない若者たち 東京工業大学准教授・西田亮介氏に聞く

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西田亮介(にしだ・りょうすけ)/東京工業大学准教授。1983年生まれ。慶応大学総合政策学部卒業。同大学院政策・メディア研究科修士課程修了。同後期博士課程単位取得退学。博士(政策・メディア)。専門は社会学。著書に『ネット選挙』『メディアと自民党』など。(撮影:佐々木 仁)
政治への監視役を担うメディアの力が衰え、「政治優位」に拍車がかかっている。政治家にいい人なんていない、メディアが正しいとは限らない──。政治への無関心や諦めが広がり、投票率は低迷が続く。加えて、自己主張を嫌う若年世代では、選挙に行くこと自体が「偏り」と、否定的に捉えられている。
17歳からの民主主義とメディアの授業 ぶっちゃけ、誰が国を動かしているのか教えてください
『17歳からの民主主義とメディアの授業 ぶっちゃけ、誰が国を動かしているのか教えてください』(西田亮介 著/日本実業出版社/1760円/337ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

──10年以上、メディアと政治の研究をしてきて、どのような変化が見られましたか。

何より、マスメディアの力がなくなりました。とくに新聞の影響力が大きく落ち込んでいる。発行部数の減少はもちろん、新聞社の社員数も減り、今の記者数は約1万7000人と10年前より約3000人少ない。記者が減ると一人ひとりの負担が増し、1つの取材に割ける労力と時間は減ります。

マスメディアは、政治・行政に対する監視役を担ってきたが、新聞社の弱体化によって監視の目が甘くなり、政治が優位に立っている、というのが近年の状況です。

新聞社より業績のよいテレビ局に期待したいところですが、民放は報道やジャーナリズムを担う者としての自覚が弱い。報道部門はコストセンターと捉えられ、担い手不足が深刻化しています。

インターネット発のメディアについても、現時点では、報道や権力監視の役割を果たせてはいない。拡散を狙い、情報を流すだけのウェブメディアが大半です。

ゼレンスキー大統領の情報発信が持つ意味

──SNSなどの影響力は増しています。今後、マスメディアではなく、一般の人々による直接の監視に期待できませんか。

極めて困難です。SNSはむしろ権力者の優位性を強化しがちです。例えば、ロシアによるウクライナ侵攻が始まって間もない頃、ゼレンスキー大統領が行った情報発信は見事なものでした。彼は侵略された国のトップが採りうる現実的な策を採りました。

ただし注意が必要なのは、ゼレンスキー氏の情報発信は「ウクライナにとって都合のよいもの」でしかない、要はプロパガンダであるという点です。

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