熊退治に武装市民軍、「理想郷建設」失敗の記録 リバタリアンの社会実験、希望の教室など書評7冊

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[Book Review 今週のラインナップ]

・『リバタリアンが社会実験してみた町の話 自由至上主義者のユートピアは実現できたのか』

・『満洲国グランドホテル』

・『希望の教室』

[新書紹介 3分で4冊!サミングアップ]

・『学問と政治』

・『マスクを外す日のために』

・『海の東南アジア史』

・『てんまる』

『リバタリアンが社会実験してみた町の話 自由至上主義者のユートピアは実現できたのか』マシュー・ホンゴルツ・ヘトリング 著/上京 恵 訳(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)

評者・ジャーナリスト 中岡 望

米国ではマスク着用義務化をめぐり、個人の行動への政府の違法な介入であるとする訴訟が頻発した。公権力の市民生活への干渉を忌避する人は「リバタリアン」と呼ばれる。語源は政治的自由を意味する「リバティー」で、「自由至上主義者」、または市場機能を重視し規制を嫌う側面から、「市場至上主義者」と訳されている。

本書によれば、リバタリアンは「個人のおおいなる自由、非常に小さな政府、気候変動や教育の不平等や医療費の高騰という社会問題を解決する純粋な市場」の実現を目指している存在だ。

彼らは米国社会で一定の影響力を持ち、支持者も着実に増えている。1972年の大統領選挙でリバタリアン党の候補が獲得した票はわずか3974票だったが、2020年の大統領選挙では186万票を獲得している。

そうしたリバタリアンが、04年に理想的なコミュニティーを建設する「フリータウン・プロジェクト」を立ち上げた。狙いは「政府による息が詰まるほどのくびきから町を“解放”する」ことだ。

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