当事者意識なければ変わらない、教職員の働き方改革「対話の場」が必要な訳 学校専門で業務改善支援する先生の幸せ研究所
「共助」を進めていくと、お互いのアイデアやノウハウを共有することで「自助」にも目が向き、先生一人ひとりの時間意識の高まりやスキルアップにつながり、自分の可能性を感じることができるようになっていきます。
管理職ではない現場の一教員でも、学校の風景は変えられる
――「共助」で学校をつくり変えていくために、まずするべきことはどんなことでしょうか?
役職にもよりますが、校長先生が「うちの学校の重点課題は働き方改革です」など学校経営計画の中にしっかり位置づけ、公式な取り組みとして行っていくようなら話はどんどん進んでいきます。
校長先生がそこまで乗り気でない場合は、働き方改革担当者やミドルリーダー、若手でも勢いのある先生など課題意識のある先生が、校長先生に働きかけつつ校内で必要性を感じている人たちの意識を高め、校長先生に「あ、これは必要なことだね」と思っていただけるような働きかけをしていくのが、最初の一歩として効果的です。
――管理職ではない先生でも、声を上げることはできるのでしょうか。
当研究所で行っている「働き方改革コンサルタント養成講座(校内コンサルタント養成講座)」を受講された都内の小学校の先生は、管理職ではなくいわゆる現場の一教員なのですが、勤務校の働き方改革の1つとして、校内研究のあり方を変え、学校をよくしていくために、先生同士の対話の場をつくりたいと思ったそうです。
でも、いきなり「これまでの校内研究を変えましょう」「対話の場をつくりましょう」と言っても反発されるだけだと思い、まずは研究主任の先生と日常的な対話を重ねていったそうです。「次回が楽しみになる校内研究って、どんな校内研究ですかね?」などと問いを投げかけながら距離を縮め、仲間となり、校内研究の一貫として先生同士の対話の場を実現されました。
教職員に無記名アンケートを行い、そこに出されたタブレットを用いた学習方法や宿題の出し方、授業準備、通知表の記入、指導案作り、やりたい仕事をする時間のつくり方などの課題について、対話の場で話し合うことができ、学校の風景が変わったそうです。
管理職でなくても、“当事者”意識を持ち、1人でも2人でも仲間を増やしてよい意味で周りを巻き込み、発信していくことで、組織が動き出すこともあるのです。

「PBL型業務改善」によって、教師の新しい専門性が向上
――「先生の幸せ研究所」では、2021年度、経済産業省「未来の教室」で実証事業を行ったのですね。
「教師のわくわくを中心としたPBL(Project Based Learning)型業務改善によって、『授業と学校組織の変革につながる』『教師の新しい専門性は向上する』」。これらの検証を目的に、2つの学校で業務改善を行いました。
そのうちの1校、大阪府の公立小学校では、キックオフで全教員30名が2時間対話して日頃思っている本音を出し合い、会議時間削減、職員室の美化、ICT活用など業務改善のための5つのプロジェクトが発足。10人の教員が業務改善推進チームに立候補し、プロジェクトを進めていきました。
コロナ禍で、感染予防対策に追われる教員たちが疲弊してプロジェクトが停滞したり、意見が対立して教員全体のモチベーションが下がった時期もありましたが、そこで諦めず、何とか対話を重ねてみんなの“納得解”をつくっていく努力を続けたところ、質の高いアイデアが出てくるようになりました。
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