SNSで自分の意見は多数派と思う人が陥る怖い罠 精査したと思っている情報がすでに偏っている

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

これは仕方ないことです。そもそもSNSなんて、みんな楽しいもののために使っているわけですから、自分があまり見たくない情報を遮断する仕組みはその点で理にかなっており、必然です。

だからこそ、SNSの利用に際しては、極端な意見しか増幅されない可能性があること、そして自分と異なる意見が必ずあるという気づきが必要となります。その発見のために「エコーチェンバー度」を開発しました。

誤解されると困るのですが、SNS上の言論が危険な状態だからその警鐘を鳴らすために作ったわけではありません。

一般には、あまり受け入れられていない意見も、世の中には当然存在しています。その意見自体が悪いわけではないですが、そういった意見に関連して自分で何か意見を言い、周りからも「そうだね」という答えが返ってきてしまうと、自分が間違っているということに気づけないんですよね。井の中の蛙、大海を知らず、というところでしょうか。

鳥海 不二夫(とりうみ・ふじお)/2004年東京工業大学大学院理工学研究科機械制御システム工学専攻博士課程修了(博士・工学)。2012年東京大学大学院工学系研究科准教授、2021年より現職。計算社会科学、人工知能技術の社会応用などの研究に従事。情報法制研究所理事、人工知能学会編集委員会副編集長。科学技術・学術政策研究所から「科学技術への顕著な貢献2018(ナイスステップな研究者)」に選定(写真:本人提供)

間違った情報に接していることを見抜くのは困難

――「見たい情報だけを見る」というSNSの選択的接触は、大きな問題として認知され始めています。2020年のアメリカ大統領選挙では、SNS上で「陰謀論」が流布され、トランプ氏の敗北を事実として受け入れない人々が大勢出現しました。1000人を超えるトランプ氏の過激な支持者たちが2021年1月6日、大統領選の不正を訴え、首都ワシントンで連邦議会議事堂を襲撃しました。今も記憶に新しい、衝撃的な出来事でした。

陰謀論による政治活動「Qアノン」や連邦議会への襲撃を見て、「もしかしたら自分は当事者になっていたかもしれない」と思う人は、そうそういないでしょう。しかし、ある側面ではすでに彼らと同じような状況になっていてもわれわれは自分では気づけないんですよね。エコーチェンバーの問題はそこにあります。

そもそも、人間がまんべんなくすべての情報を仕入れてくることは事実上できないのですから、自分が少数派なのか間違った情報に接しているのかを見抜くことは極めて困難です。

むしろ偏った情報を信じている人たちのほうが「自分は情報をきちんと調べて精査して結論に至っている」と考えていることが多いようです。そのときに精査した情報がすでに偏っている可能性になかなか気づけません。

次ページ保守の声はリベラルの声より中間層に届きやすい
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事