2大高速列車合併、「欧州鉄道網」大変革の予感 ユーロスターとタリス、ルート拡大期待高まる

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コロナ禍の2年間、ユーロスターは最も影響を受けた乗り物のひとつだった。2019年には年間1110万人だった利用者数は、2021年には160万人まで減少。存続に向け、同年5月には株主および銀行から2億5000万ポンド(約390億円)の短期借入金の注入を受け、なんとか破綻の危機をしのいだ。

国際列車のユーロスターはコロナ禍で利用者が激減し、一時は危機的な状況にあった(筆者撮影)

2021年秋以降は、イギリスやフランス政府によるコロナ感染対策の緩和で、観光需要が一気に回復した。筆者も在住するイギリスからフランスやドイツなどを訪れる機会があったが、すでに出入国時のコロナ検査などは省略されており、それが旅行業界の回復に一役買っている。検査の有無は旅行の日程を大きく左右する。フランスで日本への帰国前にPCR検査を受ける同行者と検査施設を訪れたが、旅行の最中に検査のためにまるまる午前中が潰れるというのは大変な手間だ。

ユーロスターの分析によると、ビジネス客の戻りは「観光客ほどには順調ではない」という。オンラインによるビデオ会議の普及はもとより、ブレグジットの完全実施でロンドン金融街シティーから欧州連合(EU)各国籍の金融マンの多くが職場を離れ、欧州大陸との往復需要が減少したことなどが重なったためだ。

タリスとの合併による「新生ユーロスター」の誕生後、「その効果が現れるのは、2〜3年先」(フランスの経済アナリスト)と予想される。共通ブランドで今後、さまざまなキャンペーンや企画運賃の導入などを図り、輸送量の増加やシェア再拡大を目指すことになる。

英国で期待高まる「ドイツ直通」

2019年時点の“グリーンスピード”計画は、合併後のロンドン発着ユーロスターのネットワークとして、現在の3カ国(フランス・ベルギー・オランダ)に加え、ドイツへ乗り入れるとしていた。タリスのネットワークはもともとフランス・オランダ・ベルギー・ドイツに広がっており、合併後にユーロスターがドイツへ、というのは妥当な選択だろう。

同計画発表時の資料では、ロンドン発ドイツ行きはベルギーのブリュッセルからリエージュを経てドイツ領に入り、ケルンを目指すという形だ。さらにその先、デュッセルドルフ、デュイスブルクを経てドルトムントまでのルートも描かれている。

イギリス―ドイツ間の直通に関しては、ドイツ鉄道(DB)がロンドン乗り入れを目指した時期もあったが、結局さまざまな障害で実現しなかった経緯もある。本格的に英独直通列車が運行されるとなれば、両国の鉄道界にとって大きなインパクトとなるだろう。

ユーロスターグループの広報担当は、仏紙コネクシオン(Connexion)に対し「新規区間や運行開始時期を公表するのは時期尚早」としながらも、イギリスでは大衆紙デイリーメールをはじめとする複数メディアが「ロンドンからドイツ行き国際直通列車実現か?」と報じている。そのほか、旅行関係の雑誌各社もこぞって新生ユーロスターのルート拡大に期待を寄せる記事を発表しており、関心の高さがうかがえる。

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