池袋で「人が巻き込まれる事件」が多発する怪奇 辻斬りの供養のために作られた「四面塔」の存在
加害者はあくまで車の異常が原因であると無実を主張したが、検察官は加害者の踏み間違えが原因だと禁固7年を求刑した。2021年、東京地裁は検察官の主張を認め、加害者に禁固5年を言い渡した。
収監されたIは、90歳の高齢だ。
罪を償うには、老いすぎている。
加害者家族だけではなく、発信を続けている事件の遺族にも誹謗中傷が続いている。
無差別に人を殺す道を選んだ男
私は、そのまま近年、ほかの「巻き込み殺人」の事件現場にも足を運んだ。
1999年、9月4日、午前11時頃、サンシャインシティのエレベーターから東急ハンズ前の地上に出た造田博は、「ウォー! むかついた。ぶっ殺す」と叫び、最初に夫婦2人を襲い、66歳の女性を殺した。次に東急ハンズ前にいた夫婦に目をつけ、29歳の女性を包丁で刺して殺害した。
逮捕された23歳の造田は、岡山県倉敷市で生まれ、岡山県児島郡灘崎町という干拓地で育つ。造田が小学校高学年の頃、祖父の遺産を手にした父親は、肝臓病を理由に大工の仕事を辞めギャンブルに溺れ、カメラ店のフィルム集配から生命保険勧誘の仕事に転職した母親も、車を乗り回すようになったのがきっかけでパチンコにハマる。
母は家事を放棄し、造田は家族不在の家で1人、コンビニの弁当を食べる生活だった。1人いた兄は、広島の大学に在学して家を出ていた。
造田は猛勉強して県内有数の進学校に合格したが、両親は借金を残し失踪した。家には債権者が訪れ、造田は高校を中退し、一時期は兄のもとに逃げ込んでもいた。進学への夢も破れ、造田は住み込みの仕事を渡り歩くが、1カ月から数カ月と、長く続くことはなかった。
「人生に絶望し、またどうしようもない環境的な不平等にイライラしたため」
と、造田は犯行動機を語る。
現在、造田は東京拘置所に死刑囚として収監されている。
造田の境遇を知るにつれ、同情心が湧き起こるのは止められない。
両親の不始末により未来を絶たれた子どもは、孤独の中で生きるしか術がなかった。
他人をうらやみ、世を憎み、自ら命を絶っても不思議ではない境遇だ。
しかし彼は、無差別に人を殺す道を選んだ。
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