集中力が「金魚レベル」になるスマホ漬けの脅威 10年間の調査で見えた子どもの脳への影響とは

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ここまでお話ししたことで「デジタルデトックス」に興味を持ったとしても、すでにデジタルとは切っても切り離せない毎日を送っていると、「デジタル機器のない生活なんて無理」「スマホがないと、子どもが友だちとコミュニケーションをとれない」など実践が難しいと感じるかもしれません。しかし、それらは見方を変えれば簡単に解消される悩みなのです。

1つ目は、私がPTAなどで話していて感じるのですが、親自身に「スマホ中毒」の方が多いこと。親のほうが「デジタル機器がないと暮らせない」と信じている人たちも多く、実は子どもを口実にしているものの、実際は「親自身、スマホがないと困る」から実践に踏みきれないケースも多いのです。

これについては、「親がデジタル機器と上手に付き合うためのヒント」として、本書に丁寧に書かれています。

2つ目については、中学生のみならず、小学生ですらスマホを持っていることが増えた時代です。「子どもが仲間はずれにされるかも」と不安に感じるのも仕方ないことでしょう。

しかし、私が調査した生徒の中には、自分の意志で「スマホを持ちません」という子が、5%ほど存在しました。この子たちがいじめの対象になっているかというと、まったくそんなことはなかった。むしろ、クラスでリーダー的な立場として堂々としている子も多く、「スマホを持っていないからいじめられる」とは、必ずしも言えないことがわかります。

デジタル脳からは脱却できる

2020年に東京で小学生が、2021年に北海道で中学生がいじめで亡くなる事件がありました。これらの事件のように、大人の目を逃れた陰湿ないじめがSNS上で行われることも増えており、むしろスマホやタブレットが「いじめの温床」になっている事実もあります。

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「LINEで学力が下がる」と説明しましたが、実は、「デジタルの使いすぎでコミュニケーション力が落ちる」「スマホ依存の傾向が出ている子は、他者との共感性が低く、攻撃性が高い」といった調査結果もあるのです。

皆さんの家庭内や学校、地域社会で目にする子どもたちのさまざまな問題行動や学力低下の問題は、ひょっとすると「デジタルスクリーン」の罠にかかっているだけかもしれない。そして、保護者の強い意志さえあれば「デジタル脳」は脱却できる。

このことを、すべての親や教育者に知っていただきたいと思います。

川島 隆太 東北大学加齢医学研究所 所長

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かわしま りゅうた / Ryuta Kawashima

1959年生まれ。東北大学医学部卒。同大学大学院医学研究科修了。医学博士。スウェーデン王国カロリンスカ研究所客員研究員、東北大学加齢医学研究所助手、同講師を経て、東北大学加齢医学研究所教授。2014年から現職。主な受賞として、2008年「情報通信月間」総務大臣表彰、2009年科学技術分野の文部科学大臣表彰「科学技術賞」、2009年井上春成賞。2012年河北文化賞。査読付き英文学術論文400編以上、著書は『スマホが学力を破壊する』『さらば脳ブーム』『オンライン脳』など、300冊以上。

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