世論を変える「1割の道」を目指して…
卓也:公立小学校をはじめ、日本の学校がヒロック初等部のように柔軟になれる日は来るんでしょうか。
蓑手:オルタナティブスクールを全国の学校の1割つくれれば、だいぶ変わると思います。実は、教育先進国と言われるオランダも、9割は普通の学校です。それでも、10人に1人はオルタナティブ教育を受けている。日本も、異なる選択肢を1割提供できればいいのです。本来、公立学校のあり方は教育の選択肢の1つにすぎません。多くの方は子どもが不登校になって初めてオルタナティブスクールを知り、「子どもが学校になじめないのは、育て方が悪かったからだと思っていた」とおっしゃいますが、選択肢の1つになっていれば、たとえその学校に合わなかったからといって、親が自分を責めなくても、お子さんが劣等であるわけではまったくないのです。
卓也:「普通の学校になじめなかったから特殊な学校に行く」という世間のイメージを変える必要があるんですね。
蓑手:そのとおりです。最近は、藤井聡太さんをはじめオルタナティブ教育を受けた方が目立つようになってきました。彼らのアーティスティックな才能をきっかけに、オルタナティブスクールも少しずつ注目され始めていますが、これが1割まで広がれば日本の教育もガラッと変わってくるはずです。

卓也:うわ〜〜〜、今、鳥肌が立ちました。1割まで広がれば、オルタナティブスクールも、公立学校や私立学校のように進学先の候補に挙がり始めるということですね。
蓑手:1割の世論が動けば、次第に公立学校でも柔軟な教育を取り入れる動きが始まると思います。現状、オルタナティブスクールの割合は約0.1%と言われていますが、実は、こうした学校をつくりたいと思っている人は山ほどいます。ヒロック初等部を1つのモデルとして、のれん分けのようにノウハウを提供できればと考えています。そうすれば、1割の道も現実的になってくるでしょう。
卓也:今まさに、その礎をつくっている段階なんですね。それは期待しちゃいます。前半の話を聞いて「日本の教育は終わったのか」と思ってしまいましたが、ようやく希望が見えました(笑)。
蓑手:危うく対談が終了するところでしたね(笑)。
(企画・文:田堂友香子、撮影:今井康一)
東洋経済education × ICT編集部
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