ウクライナ戦争を機に、自民党は専守防衛路線を転換する政策を推進。参院選での重要な争点に。
ロシアによるウクライナ侵略は長期化し、ロシア軍による残虐な殺戮(さつりく)も明らかになっている。この戦争は日本における安全保障をめぐる議論にも大きな影響を与えざるをえない。日本を不当な攻撃を受けるウクライナの立場に重ねるか、攻撃的な権威主義体制であるロシアの立場に重ねるかで議論はまったく異なってくる。
暴虐なロシアに対して英雄的な抵抗を続けるウクライナの姿は、憲法9条の改正を主張してきた保守的な政治家を大いに刺激している。4月21日に自民党安全保障調査会は、専守防衛という国家路線を転換する提言をまとめた。その要点は、防衛費を5年間で国内総生産(GDP)の2%に倍増する、いわゆる敵基地攻撃能力を反撃能力と言い換え、基地のみならず相手国の指揮統制機能をも攻撃できるようにする、中国を「重大な脅威」と位置づける、ことである。
この種の政策を推進する人々は現実主義者を自称するが、自民党の提言は現実への省察を欠いたアジテーションである。防衛費の倍増は、約6兆円の増加を意味する。消費税率に換算すれば2%以上である。それだけの財源をどこに見つけるのか。財政、経済が疲弊し、国民生活が危機に陥ることが容易に想像できる。
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