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独自集計であぶり出し「プライム市場」の落第企業 いったんは基準を満たした企業も油断できない

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プライム市場では「流通時価総額」基準を下回り、すでに上場維持基準を下回る企業が出てきている。

4月4日から東証の新市場が始動したが……(撮影:尾形文繁)

特集「東証プライム銘柄の真贋」の他の記事を読む

「負のサイクルに陥っています」。ある上場企業の社長は、そう言って深いため息をついた。

市場再編の構想が明らかになった当初はこの社長が多くの株を保有しており、流通株式時価総額100億円以上というプライム市場の基準を満たしていない状態だったという。

流通株式時価総額を上げるには、社長が株を売却し流通株式を増やすか、株価を引き上げるしかない。社長は「プライムに上がるためなら」と保有株の売却を決断。かろうじて基準を満たし、プライム移行を勝ち取った。

ところが、程なくして問題が発生した。株価がじりじりと下がったことで、流通株式時価総額がまたもや100億円を下回ってしまったのだ。

この社長は、株を売却する際に市場への影響を小さくしようと、信託会社を経由して少しずつ売却する形を取っていた。東証の基準では、信託会社に移った時点でその株は流通株式とされる。そのため、当時の株価では基準をクリアできたわけだ。

その後、信託会社を通じた売却が始まったが、売却にかかる期間は半年以上。その間株価は低空飛行を続けている。基準を満たそうと流通株式を増やせば、株価が下がり、基準が遠のく。まさに“負のサイクル”というわけだ。

この社長は「上場廃止にはなりたくない。何か手を打たなければ」と日々頭を悩ませているという。

基準未達企業がわんさか

この企業のように、いったんは基準を満たし、プライム移行を決めた企業の中にも、すでに上場維持基準を下回る企業が出てきている。その理由はさまざまだが、とくに目立つのは、流通株式時価総額が基準を下回る企業だ。足元の相場環境が悪化する中、株価が下落したことで基準を割ってしまっている。

移行後に上場維持基準を下回った場合は、事業年度末から3カ月以内に計画書を提出し、経過措置の適用を受ける必要がある。

さらに大きな問題は、TOPIXから外されてしまうことだ。2022年10月時点で流通時価総額が100億円に達していなければ、「段階的ウエイト低減銘柄」に指定され、組み入れ比率が順次下がっていく。こうした企業たちは計画書提出予備軍であり、隠れたゾンビ・プライム企業ともいえるわけだ。

そうした企業をあぶり出すため、東洋経済はプライム移行企業の「流通株式時価総額」を独自試算した。なお、時価総額には、2021年12月〜2022年2月の3カ月における平均時価総額を用いている。急激な株価の変動で一時的に基準を下回った企業を除外するためだ。

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