責任者が明かす「大学ファンド」運用戦略の全貌 目標に掲げる運用益4.38%は野心的と思わない

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4.38%以上という高い運用目標を実現できるのか、10兆円規模の「大学ファンド」の運用を担う科学技術振興機構の喜田昌和運用業務担当理事に戦略を聞いた。

運用責任者の喜田氏は「運用にはリスクが伴うのは痛いほど分かっている」と慎重な姿勢を見せる  (撮影:今井康一)

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岸田政権肝いりの大学ファンドは研究力低迷の打開策として期待を集めている。10兆円という超巨額を運用し、年間約3000億円の運用益を「国際卓越研究大学」に選ばれた数校の大学に配分する計画だ。しかし、10兆円のほとんどを国の借金である国債で賄うことや4.38%以上の高い運用目標を掲げることに不安の声もあがる。大学ファンドの運用を担う科学技術振興機構(JST)の喜田昌和運用業務担当理事に戦略を聞いた。

――大学ファンドの運用の基本方針を教えてください。

4.38%の運用目標を過度に野心的とは思っていない。大事にしているのは年間3%の拠出ができる運用益を出すということ。3%に、国が推計している長期物価上昇率1.38%を足した4.38%以上の運用益を目標としている。これはあとの世代の人たちに同じ金額の支援をしても価値が下がっていくので実質的には同じ価値の支援ができるようにするためだ。

標準ポートフォリオをグローバル株式65%、グローバル債券35%と設定し、ここから算出されたリスク許容度の範囲で基本のポートフォリオを作る。この基本ポートフォリオに基づいて運用を進める。(年間約3000億円規模の)運用益を配分するのは運用開始から5年以内がメドだが、基本ポートフォリオの成熟には10年はかかるとみている。まずは、債券などの利息で安定的に運用益を確保していく。安定的に運用益を確保しながら、今後は時間をかけて、プライベートエクイティ(PE=未公開株式)などオルタナティブ(非伝統的)投資の割合も増やしていく計画だ。

足元はウクライナ情勢やインフレ懸念があり、株価は横ばい気味になっている。金利も上昇している局面で投資機会があるといえる。一方で、先行きの不透明性は増している。メリットとリスクを踏まえて、機動的に投資したい。

――運用の初期段階においてどのようなことを意識していますか。

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