世界に遅れる科学技術「退国」ニッポンの深刻度 岸田政権が掲げる「成長戦略の第一の柱」の課題

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岸田政権は成長戦略の第一の柱に「科学技術立国の実現」を掲げる。だが、定量的な成果目標は示されていない。

岸田首相は科学技術力の強化に注力する方針を打ち出している(時事通信)

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「成長戦略の第一の柱は、科学技術立国の実現だ」

2021年10月8日、岸田文雄首相は、就任後初の所信表明演説でそう述べた。そのための施策として科学技術分野の人材育成の促進や、10兆円規模の大学ファンドを創設して世界最高水準の研究大学の形成を目指す考えを表明した。

立国――。広辞苑には「ある基本的な計画や方針によって国家の存立・繁栄をはかること」と記されている。現代において国家の繁栄とは、主に経済的な発展を指すだろう。

日本の科学技術は「質」も「量」も低迷

ところが日本の科学技術力は目下、世界の中での相対的な位置において、上昇するどころか下降の一途をたどっている。科学技術の向上が「立国」につながるのであれば、現在の科学技術の低迷は、逆に経済成長を鈍化させる「退国」につながることになる。

科学技術力を示す主要指標のうち、質を示すものとして重要視されているのが、「トップ10%論文」だ。ほかの論文に引用された回数が各分野、各年で上位10%に入る、影響力の大きな論文の数を指す。

文部科学省の発表によると、そのトップ10%論文数の最新の調査期間(2017~2019年の3年間平均)で日本は、主要7カ国(G7)の中で、最下位の10位に沈んだ。2000年代半ばまでは4位前後をキープしていたが、以降はランクダウンを続けている。

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