「科学研究のカネ」を巡る、行政VS国立大学の攻防 「10兆円ファンド」が日本の科学技術力を左右

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科学技術に投じる公的資金の水準を巡り、行政と国立大学は真っ向から対立。「10兆円ファンド」はその打開策となるのか。

世界の主要国では、研究の中枢である大学の研究資金が増えている一方、日本では横ばいが続いている(写真はイメージ)

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“地獄の沙汰も金次第”という言葉がある。地獄での裁判でさえ、お金のありなしで結果が変わる。ならば、世の中の大抵のことはなおさらお金で決まってしまう、という意味だ。

科学技術力も、お金が左右する部分は大きい。資金力があれば、優秀な研究者を招聘できるだけでなく、支援スタッフも数多く雇うことができる。高額な実験装置も買い揃えられる。

その科学技術につぎ込む日本の公的資金の水準を巡り、国立大学と行政は真っ向から対立している。国立大学側からは「少ない」という声が上がり、財務省は「充分に出している」と主張する。

科学技術力の低下を招いた要因

2021年6月、国立大学協会は、文部科学省宛てに18の提言を提出した。その中で国立大学への予算配分に関して「我が国が発展するための未来への投資として増額すべき」と記し、運営費交付金の増額が「必須」だと説いた。だが、財布を握る財務省が応じることはなかった。

運営費交付金とは、国が大学に出す「渡し切り」のお金だ。大学側は人件費に充てるほか、比較的自由に使途を決められる。だが財務省は2004年度の国立大学法人化を契機に、運営費交付金を2015年度まで前年比でほぼ毎年約1%ずつカットしてきた。現在の運営費交付金総額は2004年度比で約1割少ない。国はその代わりに、研究内容の評価などに応じて支給する競争的資金への転換を進めてきた。

国立大学の研究者らは、この運営費交付金の削減こそが、科学技術力の低下を招いた大きな要因であると主張している(科学技術力低下の背景はこちらから)。主な理由は2つだ。

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