国立大学長が語る「日本の研究力復活」の必須条件 10兆円ファンドは賛成だがそれだけでは不十分

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「10兆円ファンド」など政府が打ち出す政策を、国立大学はどうみているのか。

国立大学協会の永田恭介会長は、運営費交付金など大学への公的資金を「増やすのが大変重要なことだ」と語る(撮影:今井康一)

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国立大学協会は2021年、政府に対して基盤費用となる運営費交付金など予算の増額を求めたが、かなわなかった。一方で政府は10兆円規模の大学ファンドを創設し、その運用益でトップ層の研究大学に巨額の資金を拠出することを決めた(ファンドの制度設計を主導した上山氏のインタビューは、こちらから)。はたして、それで日本の科学技術力は上向くのか。永田恭介会長(筑波大学長)に聞いた。

 

――2004年度の国立大学の法人化以降、科学技術力を示す各種指標において、世界の中で日本は今も下降を続けています。その原因と、反転のために必要なことは何だと考えますか。

まず、研究には当然お金が、そして人も研究環境の整備も必要になる。基盤的経費である運営費交付金や、プロジェクト向けの競争的資金などだ。研究力を強化するためには、これらを増やしていかないといけない。

運営費交付金は、基本的には人件費と光熱費みたいなもの。それが国立大学の法人化以降は逆に減らされてしまっていることで、(無期雇用の)研究者が減ってしまっている。

国はその代わりに科学研究費などを増額して外部資金を拡大しているが、大学からの応募数が増えて採択率は下がってしまっている。運営費交付金と競争的資金によるデュアルサポートという今のやり方が成功しているとは思わない。

研究者も増やさないといけないが、ここにも問題がある。教員の数自体は増えている。ところがFTE(研究に専従した時間割合を考慮した研究者数)に換算すると減っている。今、国立大学の論文数はほぼ微増の傾向だ。FTE換算がどんどん減っているのにもかかわらず論文数を保っているのだから、これは頑張っていると言えるのではないか。

今よりも論文数を増やすには、FTEを増やす努力をしない限りはどう考えても大きくは伸びない。FTEと論文数は正比例し、論文数とトップ10%論文(他の論文に引用された回数が各分野で上位10%に入る影響力の大きな論文)は正比例するからだ。FTEの要素は人の数と、そこで研究に専従した時間比率の積だ。

だから、この2つを増やさなければいけない。研究者の数が増えながらFTEが減っているのは、研究以外の負荷が相当かかるようになっているからで、研究環境も整えなければならない。

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