トヨタ「国内の全工場停止」はひとごとではない サプライチェーンを狙った攻撃が増えている

✎ 1〜 ✎ 3 ✎ 4 ✎ 5 ✎ 6
拡大
縮小

部品会社で起きたシステム障害。実は、トヨタ関連企業における不正アクセスの事例はほかにもある。

国内の全工場が停止。わずか1日だけとはいえ、減産影響は国内の月間生産台数の4~5%に当たる約1万3000台に及んだ(撮影:鈴木紳平)

特集「サイバーセキュリティの大問題」の他の記事を読む

国内の全工場停止は1日で済んだが気は抜けないだろう。

トヨタ自動車は2月28日夕方、国内仕入れ先のシステム障害を受けて、3月1日に国内全14工場、28ラインの稼働を停止すると発表した。トヨタにとって、サプライチェーン(部品供給網)のシステム障害で国内工場の稼働を停止したのは今回が初めてだ。

発端は、トヨタの1次仕入先でダッシュボードなど自動車内外装部品を手がける小島プレス工業(愛知県豊田市)のサーバーでウイルス感染が判明したことだ。同社がサーバーの障害を検知し、ウイルス感染と英文による脅迫メッセージを確認したのは2月26日深夜。翌27日にその事実がトヨタに伝えられた。

ウイルス感染でネットワークを遮断した小島プレス工業は、トヨタや仕入れ先との間に暫定的な代替ネットワークを構築。これで部品の受発注や納品に関するデータのやり取りを再開し、3月2日にはトヨタの国内工場が生産再開に漕ぎ着けた。

小島プレス工業は目下、経産省の担当課と連携するほか、トヨタ本体からの人員派遣やシステムベンダーの協力を得て、攻撃を受けたサーバーの復旧を進めている。サーバーの完全復旧には1~2週間を要するという。

「急にやられた」わけではない

  ウクライナ情勢の緊迫化などから、経済産業省など関係7省庁は2月下旬に、「昨今の情勢を踏まえるとサイバー攻撃事案のリスクは高まっていると考えられる」としていた。今回の一件を受けて、企業などのサイバーセキュリティ対策強化について改めて注意喚起を行った。

 だが、自動車分野でのサイバーセキュリティ対応能力の強化を推進する、一般社団法人Japan Automotive ISACの中島一樹サポートセンター長は「サプライチェーンへのサイバー攻撃は2020年から増えはじめている。(小島プレスの一件は)急にやられたというよりも、増えている中で起きたことだろう」と話す。

関連記事
トピックボードAD
連載一覧
連載一覧はこちら
トレンドライブラリーAD
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT
有料法人プランのご案内