各国政府や同業他社が掲げるより10年前倒しの「排出ゼロ」目標をぶち上げた。焦点は、1社で日本全土の排出量より多い「スコープ3」を減らすための具体策だ。
世界の二酸化炭素(CO2)排出量のうち、約4割を占めるのが「発電」関連だ。政府は再生可能エネルギー関連の開発投資を後押しする一方、非効率な石炭火力発電所の早期運転終了を推進。こうした取り組みを通じ、2050年に日本の温室効果ガス排出実質ゼロ(カーボンニュートラル)の達成を狙う。
かつて日本の産業を支えた重工業にとって、この流れは死活問題だ。三菱重工業やIHIといった重工大手は、利益の半分以上を火力発電向けのガスタービンなどの発電機事業に依存する。事業の屋台骨が揺らいでいることは間違いない。
そうした中、三菱重工が2021年10月に公表した目標が注目を集めている。顧客による自社製品の使用を含めたカーボンニュートラルを、2040年に達成するというものだ。
対象となる排出量は膨大
日立製作所やアメリカのゼネラル・エレクトリック(GE)もカーボンニュートラルの目標を掲げているが、その達成時期は政府目標と同じ2050年としている。それより10年前倒しする三菱重工の計画に対し、他社の幹部は「火力発電が強い三菱重工としては、ずいぶん思い切った印象だ」と漏らす。
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