カカオ生産の「根深い問題」の解決に向け、ロッテが動き出している。単なる提携ではなく、完全子会社化の道を選んだ背景とは。
「私たちに力を貸してほしい。不安なことがあれば、何でも言ってほしい」
2021年の12月某日。京都市内にあるチョコレートメーカー・Dari K(ダリケー)のオフィスにそろった社員たちは、一様に不安げな表情を浮かべていた。その前に立ち、冒頭のように熱を込めて語りかけたのが、国内菓子メーカー大手・ロッテの牛膓(ごちょう)栄一社長だ。
ロッテは2022年1月14日、ダリケーの全株式を取得し子会社化した(買収額は非公開)。生産者や環境に配慮した持続可能性の高い原料調達の仕組みや、発酵・焙煎に関連するフードテックのノウハウなど、ダリケーの強みを自社に取り込む狙いがある。社員集会はこの説明のために開かれたものだ。
「M&Aは選択肢になかったが」
ダリケー社員が戸惑うのも無理はない。ロッテとダリケーとでは、事業規模や消費者イメージが大きく異なる。加えて成長戦略上も、ロッテの買収話が浮上する前は「短期目標はIPO(新規株式公開)で、M&Aという選択肢は念頭になかった」と、ダリケーの吉野慶一社長は話す。
だがロッテの意図を知るほどに、吉野氏の意志は変化した。ダリケー社員も「(子会社化を原因とする)退職者は誰一人出ていない」(吉野氏)という。何が決め手となったのか。
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読み頂けます。
登録は簡単3ステップ
東洋経済のオリジナル記事1,000本以上が読み放題
おすすめ情報をメルマガでお届け
無料会員登録はこちら
ログインはこちら