持続可能な航空燃料「SAF」で運航するANAの企業向け新プログラム。短期的利益につながらずとも同社が「猛進」する背景とは。
「脱炭素」という向かい風を逆手にとれるか――。
国内航空最大手の全日本空輸(ANA)は1月20日、持続可能な航空燃料「SAF(Sustainable Aviation Fuel)」での運航を通し、企業が社員の出張時に発生させるCO2(二酸化炭素)を削減できるプログラムを受け付け始めた。
SAFとは、使用済みの食用油などの再生可能なエネルギー源から生産されるジェット燃料。従来の化石燃料から代替することで、CO2排出量を約80%抑制できる。4月から運用する同プログラムで、SAFのレートを基にANAは料金設定を半年ごとに見直し、企業から希望するCO2削減量に応じて料金を受け取る。
「商売ではございませんので」
東京証券取引所は2021年6月にコーポレートガバナンス・コードを改訂し、2022年4月から再編される東京証券取引所プライム市場の上場企業に対し、気候変動にかかわるより高度な開示を求めていく。企業が脱炭素化を強く迫られるようになる中、ANAはそのニーズに移動の面から応える構えだ。
これに先立ち2021年10月からは、貨物輸送における同様のプログラムを開始。すでに物流系の3企業が参画し、現在も国内外から問い合わせが集まる。
一見、SDGsへの対応ニーズに応えて稼ぎつつ、自社便も脱炭素化する「おいしいビジネス」に映るこのプログラム。ただこのSAF便、ANA関係者に話を聞けば聞くほど、営業施策という意識が薄い。同社の営業部門を統括する井上慎一専務も「商売ではございませんので」と断言する。
それもそのはず、ANAの真の狙いは、平子裕志社長が発表会の去り際で「本当に難しい」とこぼした、同社が抱える”深刻な課題”の解決にある。
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