当事者から「奪う」のでなく、できる「工夫」一緒に考えて おれんじドア代表 丹野智文氏に聞く

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たんの・ともふみ 1974年生まれ。東北学院大学卒業後、ネッツトヨタ仙台入社。2013年若年性アルツハイマー型認知症の診断を受け営業職から事務職へ異動、現在は認知症への理解を広める活動が軸。15年認知症当事者のための相談窓口「おれんじドア」開設。著書に『丹野智文 笑顔で生きる』ほか。(撮影:ヒダキトモコ)
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認知症の私から見える社会 (丹野智文 著/講談社+α新書/880円/160ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
蔓延する「認知症=終わった」感。もうダメかもと諦める本人、人前で恥をかかせないよう行動を縛りつける家族、「あなたが認知症なら、私なんかもっと認知症だよ!」と軽口をたたいてしまう人々、当然のように「誰と一緒に来ますか?」と尋ねる窓口担当者……。元自動車トップ営業マンで、39歳のとき認知症と診断された当事者である著者が、認知症を取り巻く現状と、よりみんなが楽になれるあり方を提案する。

診断翌日から周囲の対応一変 自信失い諦め、依存度高めていく

──「家族から車に乗らないでと言われ、車や鍵を隠され免許証を奪われた」。認知症当事者の話にギクッとしました。読んで、身に覚えのある家族は少なくないかと。

当然ですが、症状が進むなどして危険な人には絶対運転させてはいけない。ただ、当事者が認知機能検査をクリアしていて、自己判断できる状況なら、奪うのではなく、自分で決めることを応援してほしいと思うのです。ぶつからない車に換えるとか、乗り続けられる工夫を一緒に考えてほしい。

認知症は、診断直後から重度の症状がすべての前提となり、行動制限・監視下に置かれる。私が39歳で診断されたとき、区役所、地域包括支援センター、どこへ行ってもまず介護保険の話でした。「会社辞めてデイサービスに通ったら?」と。30代の人間が働き続けるという普通の考えがなかった。進行してから行動を変えるのは難しいけど、段階に応じた工夫や対応で病気とうまく関わっていければ、よりよく生きられるはずです。

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