戦後最悪となった日韓関係 韓国大統領の軌跡を描く 静岡県立大学教授 小針 進氏に聞く

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こはり・すすむ 1963年生まれ。東京外国語大学朝鮮語科卒業、韓国・西江大学校公共政策大学院修士課程修了、ソウル大学校行政大学院博士課程中退。在ソウル日本大使館外務省専門調査員などを経て現職。『日韓交流スクランブル』『韓国人は、こう考えている』など著書多数。
文在寅政権期の韓国社会・政治と日韓関係
文在寅政権期の韓国社会・政治と日韓関係(小針 進 著/柘植書房新社/4400円/336ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
2022年3月に大統領選挙が行われる韓国。1期5年制で制度的に再選がないため、現在の文在寅(ムンジェイン)大統領は退任する。日本との関係が悪いままだった文在寅政権をどう評価するか。そこには日韓関係の構造的変化が見えてくる。

「当為性」を重視する姿勢 日本の重要性の低下も一因

──「最悪の日韓関係」といわれた文政権の5年間が間もなく終わろうとしています。

研究者仲間と「日韓関係がこれほど悪化した時期は、後々どう語られるだろうか」と会話したのが、本書を執筆した理由の1つです。文政権期の韓国社会・政治に対する定点観測やメディア報道の問題点、大統領の対日・対中観、日本人の嫌韓といった分析とともに、両国の政府関係文書なども精査しながら記述しました。

──これまでの大統領と比べ、文大統領をどのような大統領として評価しますか。

韓国現代史では、いわゆる保守政権が経済成長のための産業化政策と米韓同盟による安全保障政策を最優先にしてきました。他方で、社会全体が民主化を希求し、民主主義が花咲きました。文大統領はこれらを基盤とする国力を引き継いだ大統領です。

ところが、産業化で成長した過去の治績を享受しながらも、これをリスペクトせず、生じた弊害の部分だけを「積弊」と焦点化し、その清算を政治の争点にして過去を全否定する傾向が強い大統領です。ただ、この姿勢は韓国社会全体の時流と、ある程度一致します。

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