米国のアフガニスタン撤退は戦後の為替安定メカニズム「ブレトンウッズ体制」の終焉50周年と重なった。1971年8月、当時のニクソン大統領が米ドルと金の兌換を停止したニクソン・ショックは、世界経済がドルを介した金本位制から変動相場制に移行する転機となった。世界最強の軍事力と経済力を持つ米国がイスラム原理主義組織タリバンに敗北した今、この出来事はドルとその世界的な役割に何らかの影響を及ぼすことになるのだろうか。
ニクソン・ショック後の50年を振り返ってみると、変動相場制とその中でのドルの支配力は当初想定された以上に強固だったことがわかる。筆者はうち39年を金融市場と職業的に関わりながら過ごしてきたが、大抵の専門家はこのシステムがこれほど長続きするとは考えていなかったはずだ。
基軸通貨ドルのこうした強靱さを踏まえると、アフガンにおける米国の失敗が重大な転機になるとは考えにくい。何しろドルは、75年のサイゴン陥落に加え、2003年に開始されたイラク戦争の失敗も乗り越えてきたのだ。それなのに、どうして「今回は違う」といえようか。ドルの趨勢は結局のところ、世界経済の今後の展開に対する人々の見通しと、主要な経済主体──もっといえば中国と欧州連合(EU)──の行動によって決まる問題なのだ。
この記事は有料会員限定です。
東洋経済オンライン有料会員にご登録いただくと、有料会員限定記事を含むすべての記事と、『週刊東洋経済』電子版をお読みいただけます。
- 有料会員限定記事を含むすべての記事が読める
- 『週刊東洋経済』電子版の最新号とバックナンバーが読み放題
- 有料会員限定メールマガジンをお届け
- 各種イベント・セミナーご優待
無料会員登録はこちら
ログインはこちら