2012年当時、米連邦準備制度理事会のバーナンキ議長と欧州中央銀行のドラギ総裁は、米ビジネス誌『フォーブス』の「世界で最も影響力のある人物」ランキングでそれぞれ6位と8位につけていた。中央銀行トップが、中国の最高権力者・習近平氏以上の実力者と見なされた時代があったのだ。08年に始まった世界金融危機と、その親戚ともいえる欧州債務危機で世界経済がガタガタになる中、中銀は政策対応を主導し、猛烈に量的緩和を進めた。「選択肢はそれしかない」という言葉がよく聞かれたものだ。
だが、今回は違う。量的緩和は続いているものの、コロナ禍への政策対応で主役を演じているのは財政だ。脇役に追いやられた中銀はプライドを傷つけられたとみえ、ここ1年半で政策の守備範囲を著しく広げるようになっている。主に野心に駆られた動きといえる。
まず、気候変動対策に触手を伸ばした。金融の安定を脅かす温暖化に金融当局として先手を打つべし、という主張である。債券の買い入れや銀行監督を通じて、まともな脱炭素計画を持たない企業の信用コストを引き上げる発想だ。
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