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「デジタルで稼ぐ術(すべ)まだ模索中」 美術館館長が語るコロナ後の経営/森美術館 館長 片岡真実

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かたおか・まみ ニッセイ基礎研究所都市開発部研究員、東京オペラシティアートギャラリー・チーフキュレーターを経て、2003年から森美術館。20年1月から現職。日本およびアジアの現代アートを中心に執筆・講演・審査など多数。(撮影:梅谷秀司)

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コロナ禍で、休館や来場者の激減などダメージを負う美術館。この難局をいかに切り抜けるか。現代アートの展示を行う、森美術館の片岡真実館長に聞いた。

1月に閉幕した「STARS(スターズ)展」は、当初目標の半分ほどの来場者数だった。本来は、2020年4月末に開幕し、東京五輪に合わせて訪日した世界のお客様に日本現代アート界のスターを紹介するはずの展示。展覧会で取り上げたのは、草間彌生、村上隆、奈良美智、杉本博司、李禹煥(リウファン)、宮島達男らだ。実は6人そろって日本で展示される機会は少ない。最新作のみならず、彼らがどうやってスターになったかの過程を見せる企画だった。

それが、美術館自体が休館したことで開幕が3カ月後ろ倒しになった。7月末には入場者数に上限を設ける日時指定制で開幕し、当日券の販売も再開したが、客足は思うようには戻っていない。

とくに、来場者の4割ほどを占めていた観光客が移動制限で来られなくなったのが痛い。従来は、地方からだけでなくアジア各国や欧米などからの訪日客も多かったためだ。森美術館だけではなく、世界中の観光地にある美術館も苦労していると聞く。

4月からは新しい展覧会が始まる。21年度も移動制限は続くとすると、いかにビジネスを回復させていくかが重点課題となる。

1つの試金石が、昨年10月からスタートした有料版のオンラインコンテンツだ。前述のSTARS展では、出展作家のトークなどを72時間レンタル・500円で提供した。コロナ禍でデジタル化を進めた美術館は複数あったが、「これまで有料で見せていた展示を、特別に無料公開する」という流れだった。森美術館はそうではなく、有料コンテンツで収益化していくという取り組みだ。1つの可能性ではあるが、収益につなげるには時間がかかる。いずれにせよ、国内の新規顧客層、新しい支援先を開拓していく必要がある。具体的にどうやっていくのかの議論を、まさに今進めているところだ。

新規顧客の開拓という点では、19年に開催した塩田千春展は会場で写真撮影をする若い女性が目立ち、来場者数約67万人と盛況だった。塩田千春展では、展示室中に張り巡らされた赤い糸がまさに「インスタ映え」するもので、SNSでシェアしたいというニーズにうまく応えられたのだろう。

森美術館は、国内の美術館で最も早い09年から作品の撮影を可能な限り許可している。SNSにたくさん写真がアップされても、多くの方が美術館に足を運んでくれるのは、情報として得るのと実際の鑑賞体験は異なるということを皆理解しているからだ。同様に、コロナ禍にオンラインでアートを鑑賞した人が徐々に展覧会に足を運べる状況になってからは、スケール感や素材感、どうやって作っているのかを含めて「やっぱりリアルは違う」という感想が多く寄せられている。

(構成 印南志帆)

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