NTTドコモでiモードの開発責任者を務めた榎啓一氏は『NTT DOCOMO テクニカル・ジャーナル 25周年記念号(2018)」でこう振り返っている。
1997年1月8日水曜日午後2時、東京都港区虎ノ門の新日鉱ビル東棟にあるドコモ本社10階の社長室に直立不動の私がいた。ドコモの創業者である大星公二社長は私にこう厳命した。「携帯電話単体で行うモバイル・マルチメディア事業を立ち上げろ」「金はいくら使っても良い」「人も社内外から好きに集めろ」と。
こうしてiモード開発が始まった。
こうしてiモード開発が始まった。
週刊東洋経済では2012年にNTTドコモの初代社長である大星公二氏にロングインタビューを行い、『長老の智慧』で4週にわたって連載した。ここではドコモ誕生時が語られている第1回を再録する。iモードはいかにして生まれたのか。
誕生時のNTTドコモは、売り上げ規模はNTTグループの3%程度で赤字。NTTで自動車電話や携帯電話を10年以上販売していたが、ほとんど売れておらず、携帯電話の普及率は1%程度だった。
安定したNTTからちっぽけな赤字会社に移った社員は不安に思っていた。ただ、私は携帯電話が売れないはずがないと確信していた。社会が豊かになると人間の行動半径は必ず広がる。そうするとすき間の時間は増えるはずだし、出先から連絡する必要もある、コミュニケーションの欲求が高まるからだ。
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