9月に大手信託銀行で明らかになった議決権数の不適切な取り扱い。今回の問題は総会の実態に目を向けるいい機会だ。4人の識者のインタビューとともに日本の株主総会が抱える課題を浮き彫りにする。
今年9月、上場企業の株主名簿管理人である信託銀行が、株主総会で数えるべき一部議決権を集計していなかったという、“不都合な真実”が明らかになった。
三井住友信託銀行株式会社(当社の株主名簿管理人)において、一部議決権の未集計が判明したため(中略)本報告書を提出する――。10月5日、東証1部上場で高級フランス料理店を展開するひらまつは訂正臨時報告書を金融庁に提出した。
ひらまつは、6月26日に開催した株主総会の議決権行使結果を6月29日に開示していたが、これを訂正した。結果、社外取締役・楠本正幸氏の18.14ポイントを筆頭に、取締役選任議案の6人と監査役選任議案の1人、7人全員の賛成率が10ポイント以上も引き上がった。
9月末以降、ひらまつのほかにも1000社を超す上場企業が株主総会の議決権行使結果について訂正臨時報告書を提出している。これは9月24日に、三井住友信託銀行とみずほ信託銀行のそれぞれが記者会見を開いて、顧客企業の代理人として郵送で受け取った議決権行使書の一部をカウントしていなかったと明らかにしたことの影響だ。
東洋経済が10月末までに開示された訂正報告書を調べたところ、取締役選任議案と監査役選任議案に関して5ポイント以上の訂正があった会社が4社あることがわかった(下表)。
9月24日の会見で三井住友信託銀行は「再集計により賛成率が約16ポイント下がった(上場企業の)議案が2つあった」と説明したが、当該議案があった企業名などは明かしていない。現時点で、訂正報告書からもそれに該当する企業は発見できていない。
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