――株主総会前日に配達された議決権行使書で、実際には届いているにもかかわらず、翌日扱いとして集計から外すことが20年近く続いていました。このことを聞いてどのように感じられましたか。
非常に驚いた。事前の書面による議決権行使の締め切りは、株主総会前日の営業時間となっている。(総会実務の現場では)「営業時間とは何時までだ」、「夕方の5時半までと明記したほうがいいんじゃないか」といったように神経を使ってやってきた。それがそもそもカウントしていなかったというのだから。
――なぜ、こうしたことが起きたと思われますか。
1980年代の株主総会のやり方をずっと引きずっていたのだと思う。つまり、株主総会は出席する株主の(議決権の)過半数(の賛成)を確保すればいいんだ、という考え方だ。
そのため、(会社は)安定株主から議決権行使書や白紙委任状をもらって、総会の2、3日前には会社提案議案への賛成を6、7割確保した状況で当日を迎えることを重視する。だから、締め切りの前日、土壇場で届いた行使書によって1~2%動いても大丈夫だと軽視していたのだと思う。
しかし、世の中は変わった。議案の可否に影響しないから集計しなくてよいという考え方はもはや通用しない。そのように変わったのはコーポレートガバナンス・コード(CGC)の影響が大きい。CGCでは、株主総会で可決されたとしても、相当数の反対票が投じられた会社提案議案があった場合、その分析を行い、株主への対応を考えるべきだと定めている。
しかも、近年は議決権行使の結果を開示するようになった。取締役同士が「あなたは賛成率が93%でしたね。私は92%でした」と会話するなど、細かい賛成率を気にしている。
そうした世の中の変化を、信託銀行がわかっていなかった。株主の意見をきちんと聞いて、経営に反映させていくというガバナンスの考え方に即していないという批判は当然受けるべきだ。
議決権行使書は一定期間持っておくべき
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読み頂けます。
東洋経済ID 会員特典
東洋経済IDにご登録いただくと、無料会員限定記事を閲覧できるほか、記事のブックマークや著者フォロー機能、キャンペーン応募などの会員限定機能や特典をご利用いただけます。
東洋経済IDについての詳細はこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら