中国の中央銀行である中国人民銀行は、広東省深圳市で「デジタル人民元」の大規模な実証実験に踏み切る。今回の実験では個人消費促進キャンペーンの一環として、デジタル人民元の「消費券」を深圳市民に配布する。深圳市政府の行政サービスアプリ「i深圳」を通じて事前登録すると、抽選で5万人にそれぞれ200元(約3120円)分が当たるもので、全体では1000万元(約1億5600万円)分のデジタル人民元が配られることになる。
中国ではアリババ系の「支付宝(アリペイ)」など、民間のキャッシュレス決済システムがすでに広く普及している。それらとデジタル人民元の違いとしては、デジタル人民元では利用者の個人情報が決済業者に渡らないことや、商品やサービスの売り手から決済手数料を徴収しないことなどがある。
消費者は民間のキャッシュレス決済で手数料は取られておらず、デジタル人民元を利用するメリットがあいまいだ。西南財経大学デジタル経済研究センターの陳文主任は、次のように指摘した。
「決済手数料がかからなければ、(小売業などの)売り手側がデジタル人民元に積極的に対応するのは間違いない。しかし消費者向けのキャッシュレス決済ツールが多様化する中、最終的にどのツールが生き残るかは消費者の選択に委ねられている」
(財新記者:胡越、原文の配信は10月9日)
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