ソシエテ・ジェネラル証券の会田卓司チーフエコノミストが経済の先行きを見るうえで重視するのが「資金需要」の分析だ。国内外のさまざまなマクロデータに基づいて、今後のシナリオを語る
──長い間、マクロ経済の「資金需要」をキーワードにインフレやデフレの見通しを論じてきましたが、現在はグローバルインフレが始まるという見方を強めているそうですね。
グローバルなマネーが実体経済の中で拡大していくこと。これが今後の動きのカギだ。これまでは、グローバルデフレだったというのが一般的な考え方だ。世界で金融緩和を進めても、グローバルにマネーが拡大しにくい何らかの理由が、金融政策の外に存在した。それがコロナ禍によってガラッと変わり、マネーが拡大しやすくなる。
──具体的な説明をお願いします。
マネー拡大の見通しは、日米欧の3極とも同じだが、まずは日本から説明しよう。
日本の国内資金需要を見ると、企業セクターが1990年代後半以降、ずっとプラスの領域に居座っている。これは本来、設備投資などで資金不足になり、家計などほかのセクターから資金を借りるはずの企業セクターが逆に貯蓄超過であることを意味する。それだけ国内で設備投資は行われないことを意味し、総需要(消費+設備投資)は破壊される。これが、日本で内需低迷やデフレが続いた主因だ。
これに対しては、企業、家計と並ぶセクターである政府が資金を借りて財政支出を行い、総需要を作ればいい。実際、一般政府収支は1990年代前半からずっとマイナスだが、問題はその規模が企業の貯蓄超過を埋めるほど十分だったかどうかだ。
図1のように1990年代までは政府と企業の貯蓄率合計はマイナス(借入超過)だったが、2000年代以降はぴったりとゼロ近傍にくっつくようになった。これでは経済全体でネットの資金需要はまったく存在しない状態だ。お金を借りて支出を増やし、その結果、経済全体の所得を増やすという流れになっていない。
金融緩和が不発だった理由
──金融緩和政策は続いていましたが、それだけでは景気拡大の効果は薄かったと。
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