黄金色の幻想的な世界が出現、産道にたたずむ胎児のよう 写真家 山崎エリナ氏に聞く

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やまさき・えりな 神戸市出身。1995年に渡仏、独学で写真を勉強しパリを拠点に3年間活動。40か国以上で撮影し、エッセイを執筆。ポーランドの美術館に作品収蔵。作品集は他に『インフラメンテナンス』『Civil Engineers 土木の肖像』など。新型コロナで延期になったパリでの写真展は2021年3月に開催予定。(撮影:大澤 誠)
トンネル誕生
トンネル誕生(山崎 エリナ 著/グッドブックス/2200円+税/96ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
トンネル貫通後、全面防水シートに覆われた黄金色のがらんどう。まばゆく反射するライトの光、静謐(せいひつ)さをたたえた巨大空間の神々しさに息をのむ。福島県川俣町・国道114号の泡吹地(あわふくじ)トンネル(203m)が完成するまでの1年半を記録した写真集。

──起承転結を地で行くように、物語は静かにスタートします。

ここからトンネルを掘っていく、と地図の施工起点を指さす写真を最初の1枚にしました。実はそれ以前に、事務所開きや電話線を引くところも撮っていました。後から地図を指さす光景に出くわしたとき、自分的にもここから完成まで立ち会うんだ、という気持ちが高まって即決しました。

──そして2枚目。さあ巨大重機登場、かと思いきや、あぜ道をとぼとぼ歩く作業着2人の後ろ姿。

もうここからは本当に時系列で見せようと。工事開始は冬。雪を踏みしめポケットに手を突っ込んで、起工する山肌を見に行くところです。新しいトンネルが開通するという光の部分と同時に、横にたたずむ田んぼの風景は消滅するんだなという陰の部分が浮かんだ。その山あいの景色に対するいとおしさというか、撮り残したくないという思いがありました。

山の神様にお祈りして入る、大事な1枚撮り逃さぬように

──本格的に工事が動き出すにつれ、登場する風景の色彩がコントラスト鮮やかになっていきます。

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