
とみさわ・いっせい 1951年生まれ。東京大学を中退し、71年から音楽評論活動に専念、主たる専門はJ−POP。ラジオのパーソナリティー、楽曲のプロデューサーを務め、尚美学園大学では音楽業界を目指す学生に講義も。『あの素晴しい曲をもう一度』など著書多数。(撮影:尾形文繁)
音楽CD市場の縮小が止まらない。今やピークの4分の1。そこにコロナ禍でライブも赤信号だ。キャリア50年の音楽評論家が、ノンフィクション作家、辻堂真理氏を聞き手に、業界衰退の原因と対策、そして対策の実践について語り下ろす。
──そもそも需要がない?
CDは売れなくても、確実に音楽は消費されている。2018年の著作権使用料徴収額1155億円は史上2番目です。需要はある。私のモットーは「いい曲は売れて当たり前」ですが、そうなっていないのは、どういう人たちがどんな曲を欲しているか考えずに作っているから。さらに、誰に歌わせるかも重要。いい曲はふさわしい人が歌って、いい歌になる。「千の風になって」をいろんな人が歌ったが、秋川雅史で大ヒットになった。夏川りみの「涙そうそう」もそうです。釣りに例えれば、どこにどんな魚がいるのかを調べ、釣り上げるにはどんな餌、仕掛けがいいかを考えないといけない。
──業界の問題点は長年変わっていない印象があります。
基本的にこの業界はどんぶり勘定。新譜が出て、販促かけて売れたら万々歳、売れなかったら次、を3カ月ごとに繰り返す。売れた理由も売れなかった理由も分析しない。マクロ的に見れば、1998年にCDが6000億円売れた理由がわからないから、今売れない理由もわからないんです。
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