放置していた社会矛盾や不備、新型コロナが暴き出した ジャーナリスト 柳澤秀夫氏に聞く

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やなぎさわ・ひでお 1953年生まれ。元NHK解説委員長。早稲田大学政治経済学部卒業後、77年NHK入局。バンコク、マニラ特派員、カイロ支局長を歴任、カンボジア内戦、湾岸戦争を取材した。「ニュースウオッチ9」初代メインキャスター、朝の情報番組「あさイチ」では“ヤナギー”の愛称でお茶の間に定着。2018年退局後は数々のテレビ番組にコメンテーターとして出演。(撮影:今村拓馬)
記者失格
記者失格(柳澤秀夫 著/朝日新聞出版/1400円+税/241ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
新型コロナで刻々と変わる日常。緊急事態宣言下でのインタビューから、あえて変わらぬ著者の胸の内を抽出した。湾岸戦争時、日本人初のバグダッド生中継。隙を見て海外取材陣の機材をちゃっかり拝借、イラク当局との水面下の闘い、揚げ句ひねり出した珍作戦……。緊迫する状況下で、なぜか笑えるエピソードの数々に、その人となりが伝わってくる。

──長年、戦争、貧困、テロを取材してきた柳澤さんにとって、新型コロナとは何ですか。

非常にたちの悪い、ずる賢い厄介な相手。人間が傲慢になってごまかしてきた社会矛盾に対して、おまえらそれでいいのか? 俺は入り込んでずたずたにするぞ、と警告を発している存在だと思います。

当初検査体制が十分でなかったとか、曖昧な受診の目安を訂正し、誤解だったと釈明した。休業を要請する一方で補償は後手後手、国民一律10万円給付のオンライン申請も、まったく追いついていない現状を浮き彫りにしました。

似てるなと思うのが、東日本大震災後の福島第一原発の放射性物質の拡散。原子力は安全だ、素人は黙ってろと専門家は言ってきた。事故が勃発するや「想定外」という言葉でごまかす。彼らがつくり上げたのは架空の安全神話でした。ではなぜ想定外が起きたのか、説明するのが専門家のはず。ところがそうじゃなかった。今回のコロナでも、従来路線でいこうとして、さまざまな不備があらわになった。

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