わが町の病院がなくなる──。厚生労働省が再編・統合の必要な424病院を実名で公表し波紋が広がる。激変する医療現場の最前線を追った。
「病院名が公表されたことで、地元住民だけでなく病院のスタッフにも不安が広がった」「県内の多くの病院名が挙げられたことで、研修医が他県に流れてしまった」「再編・統合の相手先は40キロメートル先の病院。災害時はどうするのか」
2019年10月末、厚生労働省が実施した地域医療構想に関する自治体などとの意見交換会では、多くの自治体から次々と不安の声が上がった。
厚労省は同年9月末、「再編統合についてとくに必要」として自治体病院や日赤病院など424の病院名を公表した。これは、公立・公的病院の29%に当たる。再編・統合や縮小など方針を決めるよう自治体に要請する方向だ。
やり玉に挙がった病院の地元自治体からの反発の声は強いが、「(反発が起こることは)ある程度想定したうえでのショック療法だったのだろう」(複数の医療関係者)との声もきかれた。
「高齢化が進み病院もそれに見合った機能に変化しなければならないのに、今のまま現状維持でよいという自治体がほとんどだった」。再編リストの作成に当たった厚労省のワーキンググループメンバーで、奈良県立医科大学の今村知明教授は病院名の公表に踏み切った理由をそう語る。
実際、病院をめぐる状況は厳しい。ほとんどの公立病院は自治体からの赤字補塡で支えられており、総額は年間約8000億円。人口減少で税収が細る中、これまでどおりの補塡を続けることは容易ではない。また民間病院の経営破綻も相次いでいる。
地方を中心に医師不足の解消も一向に進まない。全国の大学病院では過労死ラインで働いても給料が支払われない「無給医」の存在が診療体制の前提となっているなど、医師の長時間労働の改善も待ったなしだ。
このまま病院が壊れゆくさまを、座視してはならないはずだ。
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