警察小説の金字塔といわれるのが、東京・新宿を舞台にした『新宿鮫』である。第1作発売から2020年で30年を迎える。作者の大沢在昌氏が頭に描く、近未来の日本の姿とは。
──『新宿鮫』をこんなに書き続けるとは想像していましたか?
第1作を書いた1990年時点では夢にも思っていなかった。愛憎相半ばする複雑な感情があります。自分の人生をすごくいいほうに変えてくれたけれど、100冊の作品の中でほぼ1割にも満たないこのシリーズが、いつもついて回るいら立ちもある。
最初、『新宿鮫』とのタイトルに編集者は「え?」みたいな感じで。あの頃はみんな、「何ですか、それ。新宿に鮫がいるんですか」って。『新宿鮫』は僕にとって29冊目の本だけど、28冊まで全然売れなくて、これもうまくいくはずがないと思っていました。
それまで僕の新刊は赤川次郎さんの本の台として使われていた。赤川さんの本が全部売れると、やっと僕の1冊目が見える。そういう扱いでした。『新宿鮫』のときもやはり本屋には見当たらない。「また台だよ」と思っていたら、編集者から「どんどん売れています」と。夢じゃないかと疑っている状態が5年。紅白歌合戦で泣きながら歌う演歌歌手がいるけれど、そんな感じで人生が変わりました。
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