インフル新薬「ゾフルーザ」軽視された耐性ウイルス 情報発信に問題はなかったか

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製薬会社は販売増を計画する。だが耐性ウイルスへの懸念は消えないままだ。

ほかの薬と違い1回の服用で済むことから、医療現場で歓迎された

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新しい抗インフルエンザ薬「ゾフルーザ」。国内では2018年3月に塩野義製薬から発売され、治療効果が高いと評判の薬だった。ところが耐性変異株(耐性ウイルス)が高頻度で見つかり、このまま使用を続けてよいか疑問が生じている。

日本感染症学会は今年秋までにこの薬の新しい使用基準を策定する方向だ。使用をめぐり議論は当分収まる気配がない。

そもそも抗インフルエンザ薬に耐性ウイルスはつきものだ。そこで問題となるのは、①耐性株の出現率、②薬の効き目の低下、③耐性株の伝播力(広まる力)だ。

ゾフルーザをめぐる動きを時系列に従い説明しよう。

15年10月、厚生労働省はこの薬を、優先的に審査する「先駆け審査」対象に指定した。既存の薬と比べ、作用機序(薬が効果を及ぼす仕組み)が違ううえ、高い治療効果が見込めるためだった。17年10月に申請が行われ、18年2月に承認。そして翌月の3月に発売と、過去にない速さで進んだ。

ゾフルーザは1回1錠飲めば済むという使いやすさもあって医療現場に瞬く間に浸透した。「タミフル」や吸入式の「イナビル」などライバル薬を押しのけて、18年10月~19年3月の半年間での市場シェアは推定39%、一気に首位に立った。

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